2月26日に劇場公開される映画『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』。「現代のアメリカにギリシャ神話に登場する神々が実在して、人間と密かに関わりを持っている」という奇想天外な設定の原作を、VFXを駆使し壮大なスケールで映画化した娯楽大作だ。この作品は『グレムリン』の脚本家としてキャリアをスタートさせ、『ホーム・アローン』シリーズや『ハリー・ポッター』シリーズの監督も務めたクリス・コロンバスの監督最新作である。来日したクリス・コロンバスに話を訊いた。

映画監督になるために、脚本を書いていた

クリス・コロンバス
スティーヴン・スピルバーグにその才能を認められ、『グレムリン』(1984)、『グーニーズ』(1985)、『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』(1985)といったスピルバーグ製作の大作映画で脚本を担当する。『ベビーシッター・アドベンチャー』(1987)で監督デビュー。監督2作目の『ホーム・アローン』(1990)は世界中で大ヒットを記録。『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)を監督し、再び大ヒットを記録。他の監督作品に『ミセス・ダウト』(1993)、『9か月』(1995)、『RENT/レント』(2005)など多数

――コロンバス監督は脚本家から映画監督になり、そのほとんどの作品が世界で大ヒットしています。今回の『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は監督にとってどんな作品なのでしょうか。

クリス・コロンバス監督(以下、コロンバス監督)「僕は『ハリー・ポッター』シリーズを監督している時に、ハリー・ポッターとロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーの3人の関係が、僕の脚本作品『ヤング・シャーロック』に出てくるシャーロックとワトソンとエリザベスの3人に似ていると思ったんです。それで、1980年代に僕が書いていた、『グーニーズ』、『グレムリン』、『ヤングシャーロック』などの一連のアンブリン(※スティーブン・スピルバーグが1982年に設立した映画製作会社)作品のような映画をまたやりたいという想いがありました。それが実現したのが、この作品です」

――今回の作品は先入観で『ハリー・ポッター』と同列で語られる事もあるかと思いますが、よりコミカルでスケールの大きなファンタジー作品ですね。

コロンバス監督「『ハリー・ポッター』の監督経験から、スケールの大きい作品を作るなら、アイディアがユニークでないと駄目だと思っていました。今回の作品の面白さというのはギリシャ神話の神々やクリーチャーたちが今現代の社会に登場するという部分だと思います。神々が古代ギリシャからイタリア、もしかすると東京に移動して、そして今はアメリカにいるぞという設定が面白いですし、エンパイアステイトビルの屋上にオリンポスがあって神々が居るとか、ハリウッドの有名な看板の裏側が冥界への入り口であるとか、とにかく笑えるし、凄くユニークだと思いました」

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々

17歳のパーシー・ジャクソンは難語症に悩み、学校にも馴染めずにいた。現代に神話の神が実在し、自分が海神ポセイドンと人間との間に生まれた「デミゴッド」だと知ったパーシーは、神々の最終戦争を阻止するために冒険の旅に出るのだった

――映画監督になった現在も、オリジナルの作品に興味はありますか? コロンバス監督の脚本から生まれた『グレムリン』のギズモや『グーニーズ』のスロースは、エンタテインメント映画史に残る名キャラクターとなりました。

コロンバス監督「『グーニーズ』などの脚本を書いていていた時代は、必死に面白いものを書いていました。とにかく監督をしたいから書いていたんです。映画監督になるための手段だったんです。監督になったといっても、『パーシー・ジャクソン』や、これまでのほかの作品でも、脚本家がいても、僕は常に脚本を書いています。リライトもしていますし、"脚本完成までの、待ち時間がもったいない"というときは自分でシーンをまるごと書いたりもします。例えば『パーシー・ジャクソン』ですと、ヒドラのシーンは、僕が書きました。原作モノもいいですが、オリジナルは大好きなので、次回作は自分のオリジナル脚本を監督したいですね」

――コロンバス監督の作品世界とVFXは切り離せないものだと思います。監督は長年映画業界で活躍されていますが、自身の映像表現に関して、VFX進歩の恩恵をどの程度実感されていますか。

コロンバス監督「今回の作品に関して言えば、とにかく水に最新のVFXを使い、水をリアルに表現したかったんです。僕の頭の中には、ヒドラのシーンでパーシーが水の壁を作って、それにヒドラがオレンジ色の炎を吐きかけるというビジュアルイメージがありました。以前は難しかったのですが、現在のVFX技術だと、このイメージは表現が可能なんです。これまでも、様々な頭の中のイメージを映像にしてきましたが、今回、初めて自分が思い描いた通りの映像表現ができました」

監督の頭の中のイメージが『完全に表現された』というヒドラとの大バトル

神の子 ジャクソンですが、最新ツールも活用します。コミカルなシーンも満載

――映画におけるこのVFX進歩の先には何があるのでしょうか?

コロンバス監督「今、本当に映像では何でも表現できるのですが、これこれから先は3D映像だと思います。今回も3Dで撮りたかったのですが、実現できませんでした。これから先はファンタジー映画に限らず、ドラマやミュージカル、コメディというジャンルの作品でも、3Dになってくると思いますよ」

――次のオリジナル作品は、やっぱり3D映画ですか?

コロンバス監督「5つくらいアイディアはあるんですが、簡単には話せない状態なんです(笑)」

      

『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は2010年2月26日 TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー(配給:20世紀フォックス映画)

(C)2010 Twentieth Century Fox

撮影:石井健