Salesforce.comは創業当時からCSRに力を入れており、2000年に立ち上げたCSRの専門部隊「Salesforce Foundation」は、利益の1%、株式の1%、従業員の労働時間の1%を社会奉仕に費やすという「1/1/1モデル」を通して、CSRを成功させている。

Salesforce Foundationで、Chief Serivce Officer and Exective Directorを務めているのがSuzanne DiBianca氏だ。

同社では成長とCSRの拡大が正比例で発展している。どうしてそれが実現されたのか? 今回は同氏に、同社のCSRの実施状況とCSRを成功させる秘訣について聞いた。

日本オフィスのCSRの実施状況

Salesforce Foundation Chief Serivce Officer and Exective Director Suzanne DiBianca氏

同氏は、Salesforce Foundationの日本での担当者を雇用する際、NECとトヨタ自動車に話を聞きに行ったと話す。「NECとトヨタは日本においてCSRに熱心に取り組んでいる企業と聞いていた。日本にとって意味があるCSRを実施したかったのと、日本と米国では違いがあると思ったので、日本企業の話を聞くことにした」

同社のCSRを社員からヒアリングを行って情報を収集し、社員が関心を持っているものをサポートする形で行う。

日本では、高齢者の失業が問題化しているということで、これをCSRとして取り組んだそうだ。「地域によって問題点が異なり、英国のダブリンでは、ホームレスのサポートが行われた」

自分たちで予算を確保するために活動することも

同社では、利益の1%と株式の1%をCSRに割いていると前述したが、Salesforce Foundationでは自分たちでさらなる予算を獲得することもあるという。

「当社では、大学に製品を販売する際に80%を割り引くが、その売上からSalesforce Foundationの予算として利益を得ることが可能になっている。これまで、スタンフォード大学とハーバード大学での販売に成功している」

ただ、大学のアカウント数は膨大なため、同社としても「当初は、Salesforce Foundationに大学への販売を任せることにはためらいがあった」と同氏。

CSRが優秀な人材を獲得する決め手に

どこの国でも優秀な人材を獲得するのは困難だが、同社の場合、CSRに惹かれて入社してくる優秀な開発者が絶えないという。

「優秀な人はどんな企業でも入ることができる。しかし、社会に役に立つ仕事はどこででもできることではない。そこで、当社のCSRの活動を知って、入社する優秀な開発者が増えている。いわば、CSRは他社との差別化の要素となっているのだ」

ちなみに、ここ5年くらい、大学を卒業したてといった比較的若い世代の人々が特に、企業が社会に貢献しているかどうかに関心を持っているそうだ。

企業の成長とCSRの発展を両立させるには?

日本の企業も当然、CSRに取り組んでいるが、専門の部署が特定のプロジェクトを立ち上げたりと、全社員が関わっているという企業は少ない。

同社ではどうして、全社員をCSRに巻き込んで、継続的に運営することが可能なのだろうか?

同氏はその要因の1つに「創業当初から取り組んでいること」を挙げた。同社の会長兼CEOであるMarc Benioff氏は創業のビジョンとして、「新たな社会貢献モデルの構築」を掲げていたという。

2つ目の要因は「リーダーを立てること」である。米国オフィスでは、各部門にリーダーを置いている。「仕事が忙しい時があっても、リーダーが統率することでうまくいっている」

3つ目の要因は「ムリを言わないこと」だ。「仕事の量や忙しさは人によって違うので、その人のペースで続けることが大切」と同氏。

また同社の場合、NPOに必要なテクノロジーを有していたこともよかったそうだ。「重病の人を抱える人にケアをする人を紹介しているNPOでは、そのマッチングに当社のシステムを使っている」

同氏は「日本オフィスは忙しいはずなのに、達成率が抜群によい。どうやって時間を作っているのだろう」と話す。忙しさは決して言い訳にはならないようだ。

「CSRにもっと力を入れたいけれどうまくいかない」といった日本企業は少なくないのではないだろうか? そうした企業にとって、Salesforce.comの取り組みは何らかのヒントを与えることだろう。