ここ最近、国内でも大規模な仮想化導入のプロジェクトが増えてきたが、ピッツバーグ大学医療センター(University of Pittsburgh Medical Center:UPMC)の仮想化プロジェクトは最大級と言ってよい。

UPMCではプロジェクト実施前、3台のメインフレーム、162台のUNIXサーバ、624台のWintelサーバが稼働していた。サーバの統合化により、メインフレームが1台、UNIXサーバが61台、Wintelサーバが244台にまで減らすことができた。

サーバを大幅に減少したにもかかわらず、OSインスタンスは増加しているのだ。WindowsのOSインスタンス数は70%、UNIXのインスタンス数は228%増加している。さらに、エンジニアの数は増加していない。そして、3年間で約8,000万ドルのコスト削減を実現したという。

UPMCで同プロジェクトを統率したのが、CIOを務めるポール・シコラ氏だ。今回、「仮想化は企業が導入すべき技術」と主張する同氏に、「CIOとしてのあり方」、「仮想化によって得られるメリット」などについて話を聞いた。

--CIOとして、どのような役割を期待されているか?--

シコラ氏: まずは、プロジェクトを失敗なく進めることを求められている。加えて、新たなビジネスを開発すること、革新的な働きをすることも必要だ。そして、忘れてならないのはやはり「コストカット」だ。CEOからは、当機関のみならず、米国全体のヘルスケアに要するコストカットを押し下げるよう、依頼を受けている。

--CIOは組織において技術の最高責任者だが、どこまで最新技術を理解しておくべきだろうか?--

シコラ氏: CIOという立場であれば、すべての技術の基本は押さえておかなければならない。優秀なスタッフを抱えていれば、熟知している必要はないのだ。ただ、比較的小さな組織のCIOを務めたことがあるのだが、その時は技術についてもある程度の知識が求められ、難しかった。今は、マネジメントとしての役割が大きくなっており、技術的な側面での働きは少なくなっている。

--技術についてもうかがいたい。今回、管理プロセスのリエンジニアリングにITILを活用したそうだが、使ってみた感想を教えてほしい--

シコラ氏: ITILの最新版であるバージョン3.0では拡張が行われており、それはよいことだと思う。しかし、ITILはあくまでもサービス管理のコンセプトやガイドラインの粋を出ていないと言える。

--それでは、クラウドはいかがか。先日、IBMが発表したCIOに関する調査では、グローバルのCIOは日本のCIOに比べてクラウドに対する関心が低いという結果が出ている--

シコラ氏: クラウドには、企業内で使われる「パブリッククラウド」とAmazonやGoogleがサービスとして提供している「パブリッククラウド」があるが、今の主流は前者である。IBMの調査でグローバルのCIOがクラウドに関心が低いという結果が出たのは、調査のタイミングのせいだろう。実際、米国のCIOとディスカッションをしていると、クラウドが話題によく上る。
クラウドも仮想化と同様、懐疑的な意見がないわけではないが、受け入れようという動きがあると、私は見ている。

--昨今の景気後退の影響は受けているか? その場合、CIOとしてどのような対処を行っているか?--

シコラ氏: 他の業界と同様、医療業界も不況の影響を受けている。例えば、病気になっても医療機関に行くことをやめた人たちもいる。そのため、大きなプレッシャーではあるが、ヘルスケアのコストを何とか削減しようとしている。CIOとしては、できることはすべてやるつもりだ。できる限り少ないリソースでサービスを提供していく。