そして今回のキーノート最大の目玉となるのが「Fusion Applications」だ。その名前はPeopleSoft買収が行われた4年以上前から登場しているものの、具体的な形が発表されたのは今回が初となる。当初の位置付けは、PeopleSoftやJD Edwardsなど、Oracleが買収したアプリケーション資産をすべて統一的なものへと収れんさせ、その将来的な統合製品のコードネームが"Fusion Applications"というものだった。だが「Applications Unlimited」という既存のアプリケーション製品をそのまま継続サポートしていく構想が発表されたことで、Fusion Applicationsはいったんロードマップから消滅し、水面下での開発が続けられる形となった。

OracleのFusion Applicationsの位置付け。既存のアプリケーション製品を活かしつつ、それとは別にSOA技術をベースにした新しい製品ラインとして用意される

Ellison氏はまず最初にApplications Unlimitedについて触れる。「既存のアプリケーションユーザーは2つのチョイスがある。1つは既存のアプリケーションをそのまま使い続けること、もう1つはFusion Middlewareをベースにまったく新しい技術とUIで一新された"Fusion Applications"を選ぶという選択肢だ。もし前者を選んだ場合でも安心してほしい、今後10年かそれ以上にわたって製品が使い続けられることを保証しよう」と述べると、キーノートの会場中から拍手が沸き起こった。

「Fusion Applicationsは完全に新しいアプリケーションスタックだ。Oracleが過去何年にもわたって開発を進め、多くのユーザーやパートナーの協力やフィードバックを経て検証を進めている。新技術を多数盛り込み、既存のOracleアプリケーション製品だけでなく、SAPを含む多くのサードパーティ環境にプラグイン可能な柔軟性も持っている。このVersion 1にあたる製品を2010年にリリースする計画だ」(Ellison氏)

Fusion Applications、特に2010年に登場予定のVersion 1でカバーされる分野。製品自体はすでに開発がほぼ終了しており、現在一部ユーザーを対象に検証に入っている

Fusion Applicationsの特徴。Fusion Middlewareをベースに構築されており、BI機能搭載のほか、モダンなUIに統一されており、SaaS環境でそのまま利用できる

Fusion Applicationsに関するそのほかの特徴としては、ERPスイートとしてだけではなく、部品単位でバラして既存のアプリケーション環境に適合できるほか、ビジネスユーザー自身によるカスタマイズ、標準化されたダッシュボード機能など、これまでの製品群にはないものを備えている

壇上では、Fusion Applicationsの初公開となるデモが紹介された。まずダッシュボードやBI機能が標準で用意されること、ソーシャル機能を取り込むなど、新世代のアプリケーションという印象を受ける。またこれまでのアプリケーションになかった新機能なども紹介されており、ざっと見た範囲だが、当初は既存のアプリケーション製品群とは直接競合しないという作りになっている。既存アプリケーションを保護しつつも、OracleとしてはFusion Applicationsの新機能をどんどん使ってほしいところだろう。

Fusion Applicationsのデモ画面その1。ビューが一新されている

Web 2.0チックなソーシャル機能が組み込まれているのもFusion Applicationsの特徴。必要に応じてIMで担当者を呼び出してコンタクトがとれる

Fusion Applicationsのデモ画面その2。新機能のTalent Manager。表示されるビューもこれまでのPeopleSoft HCMにはないタイプのものだ