宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月17日、宇宙実験の知識を生かし、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心とした共同研究契約により、NTTおよびフルウチ化学との共同実施の下、温度と濃度勾配を一致させる新たな結晶成長を考案したほか、融液の厚みを薄くすることで対流を抑制しつつ結晶化させる技術を開発し、これを利用して30mm角のInGaAsの単結晶材料を製造することに成功したことを発表した。

また、同結晶材料を用いて製造した半導体レーザーを使用することで、光ファイバ通信で用いられる波長1.3μm帯において、20kmの遠隔地へ毎秒1,010回の点滅信号のエラーなし光ファイバ通信実験に成功したことも明らかにした。

このInGaAs半導体レーザーは、従来型のInPの半導体レーザーに比べ、温度が上昇しても出力の低下が少ないため、冷却が不要となり、将来的には光通信都市間ネットワークの消費電力を低減できる可能性を持つ。

新結晶成長法の原理(左)、新開発レーザーの構造(中央)、出力温度依存性比較の概念図(右)

なお、JAXAでは、2010年秋から2011年にかけて、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」内での微小重力環境下における結晶成長実験を行う計画としている。宇宙では、重力の影響が少ないことから、より組成の均一な理想的な単結晶を製造することができ、地上実験での単結晶と比較することで、地上での単結晶製造における性能向上に向けた技術開発を目指すとしている。