セブン&アイ・ホールディングスとNECは、流通小売事業とITとの融合を目指した新会社「株式会社セブンインターネットラボ」を設立する。

新会社は、セブン&アイグループの小売業のノウハウと、NECのシステムに関する研究、技術ノウハウを結集。ネット社会におけるさらなる技術活用を追求や、小売業の新たな可能性を研究するほか、流通業におけるIT人材の保有、育成により、ノウハウの蓄積、共有オペレーションを実現し、IT投資の効果の最大化を目指し、システム開発を行う。

「セブンインターネットラボ」の目指す姿

新会社の社長に就任するセブンアンドワイ 代表取締役社長 鈴木康弘氏

将来的には研究・開発の成果をセブン&アイグループのビジネス革新と、NECグループの新製品開発に活かすことになる。

資本金は、2億円。出資比率はセブン&アイ・ネットメディアが50%、NECが40%、セブンアンドワイが10%。設立予定は3月24日。社長には、セブンアンドワイの代表取締役社長 鈴木康弘氏が就任する。当面は、研究部門を対象に、20数人規模でスタートし、NECの研究開発部門からも4名程度出向。非常勤役員として、NEC側が1人派遣する。

株式会社セブンインターネットラボの概要

社長に就任する鈴木康弘氏は、「研究分野において、小売とITが協働するのは世界初の試みとなる」とした。

新会社では、研究事業とシステム開発事業の2つに取り組む。

研究事業では、顧客、小売業、生産者の3者を結び、新たな小売業の業態を創造する「ネットとリアルの融合ビジネスの研究」、次世代ハードウェアの活用とともに、現在実現されている視覚、聴覚のデジタル化に続く、臭覚、触覚、味覚のデジタル化への研究などをはじめ、新技術を小売業に活かす「次世代に向けた新技術活用の研究」、グループ売上高9兆1000億円、3万5000店舗、一日あたりの来店数1400万人という膨大なデータを活用し、仮説、検証サイクルの加速化を図る「戦略的なデータ活用の研究」を行う。

研究事業の内容

一方、システム開発事業では、発注者と開発者が一体化することで、フィードバック時やレビュー時のコミュニケーションロスをなくす「共同開発体制の確立」、要件定義からプログラミング、導入までの開発ノウハウを蓄積し、バラバラだった開発体制をグループ全体の継続開発による生産性向上へとつなげる「開発ノウハウの蓄積」、各社ごとの運用によるコスト増の見直し、ハード、ネットワークなどを含めて、インターネットに関するシステム全体の開発、保守、運用の一本化を図る「ローコストオペレーション」に取り組む。

システム開発事業の内容

「研究事業では、次世代技術を活用した小売業の新たな可能性を追求し、システム開発事業ではIT投資効果の最大化を目指す。とくに、ローコストオペレーションでは、インターネットに関わるシステムを対象に、数年後にはコストを半減できるだけの効果を目指したい」としたほか、「ネットとリアルの融合では、まずはネット通販が先行していくだろうが、ネットスーパーのような形で、ネットで注文を受けて店舗から届ける仕組みや、サービス提供手法として、他のサービス企業と組むことも有望なものだといえる。ネットとリアルの融合の先行きに明確な答えがあるのならば、新会社を作って研究はしない」などとした。

また鈴木社長は、「セブン-イレブンジャパンとNECは、1978年にターミナル7と呼ばれる世界初のチェーン店発注システムを作り、発注データのバーコード化と伝送化を実現し、これがのちのPOSシステムの走りとなった。当時は、第一次オイルショックと、戦後初のGNPマイナスという不況下にあり、そのなかで、セブン-イレブンジャパンは単品管理への挑戦と、常識を超えた小売業のIT化を目指し、NECは考えられない低コストと、常識的には不可能な納期を実現した。この製品の共創により、流通・IT業界に革新をもたらした。今回の取り組みは、世界同時不況というなかで、第2の共創による革新を目指したものであり、前例のない研究、開発会社の設立に取り組む。 今度は、ビジネスの共創により、流通・IT業界の革新を目指すものともいえ、当社は、情報化社会への本格対応、IT人材の保有、育成を目指し、NECはIT人材の投入、研究・技術ノウハウの提供を行うことになる」とした。

セブンインターネットラボでは、経営ビジョンとして、「インターネットの研究・開発を通して、流通とITの共創により、流通革新の実現に挑戦し、お客様の豊かな生活と社会の発展に寄与する」ことを掲げるとしている。

セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役社長 村田紀敏氏

セブン&アイ・ホールディングスの代表取締役社長 村田紀敏氏は、「セブン&アイ・ホールディングスは、3年半前に、7つの事業を挑戦する領域とし、そのなかにIT/サービスへの取り組みを入れている。NECとの合弁会社は、どういう形で、新しいものが生まれるのか、いまの段階では描き切れていない。一緒にやっていくなかで、考えているもの以上に、新しいものが出てくることに期待している。グループにおいては、変化への対応を徹底している。変化への対応をいまやらずに、いつやるのか。今回の取り組みは、NECと共同で新しい分野に挑戦するものであり、足下を強化し、将来に向けて縮むことなくチャレンジしていくものになる」とした。

セブン&アイ ネットメディア 代表取締役社長 後藤克弘氏

また、セブン&アイ ネットメディアの代表取締役社長 後藤克弘氏は、「IT/サービス事業領域における会社の再編・統合を進めており、今年4月以降は、ネット通販事業はセブンアンドワイにすべて統合し、セブンドリームはセブンイレブン店舗でのチケットサーヒスや各種サービス提供事業、ネットサービスの運営サポートを行うことになる。新会社は、研究・マーケティング事業、システム受託開発機能を持つことになる。セブン&アイ ネットメディアグループ事業会社全体で300億円規模の売上高を、3-5年後には1000億円規模に育て上げたい。エンジンとなるのはEコマース事業になる」などとした。

NEC 代表取締役執行役副社長 相澤正俊氏

一方、NECの代表取締役執行役員副社長 相澤正俊氏は、「セプン-イレブンとの協業で始まった両社の関係は、イトーヨーカ堂のPOSシステム、セブン銀行のATMなどの協業に発展し、成功してきた経緯がある。NECとセブン-イレブン・ジャパンが最初に協業した年は、当社の小林宏治がC&Cを発信した年。そのC&Cが、いまはNGNを先頭に、セキュアなネットワーク環境になり、サービスプラットフォームソリューションビジネスとして、顧客に提案している。そうしたなか、鈴木社長からネットとリアルを融合した新たな小売業としての考え方ができないかという提案があった。Googleの事業は、ネットワークを持たないネットワークサービスであり、これと同じ発想なのが、金庫を持たない銀行であるセブン銀行である。今回の取り組みは、店舗を持たない小売業への取り組みであると解釈している。そのためには技術開発や新たな発見が必要であり、それを、日本を発信源としてやっていくことが、IT業界の活性化には必要である」とした。

セブン&アイグループとNECの代表。左からセブン&アイ・ネットメディア代表取締役社長 後藤 克弘氏、セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役社長 村田紀敏氏、セブンアンドワイ 代表取締役社長 鈴木康弘氏、NEC 代表取締役 執行役員副社長 相澤正俊氏、NEC 執行役 木下学氏