産業技術総合研究所(産総研:AIST)は、ダイヤモンドとルテニウム(Ru)を組み合わせ、400℃以上の高温状況でも長時間動作が可能なパワーデバイス用ダイオード整流素子を開発した。

試作したダイオード整流素子の外観

ダイヤモンドは半導体としても、他の半導体素材と比べて物理特性に優れており、現在の主流であるSiと比べても数十倍から数百倍の高速化が可能である。ただし、基盤となる単結晶の薄膜の形成が困難であり、結晶サイズが小さいものに止まっている。また、耐熱性にも優れ、パワーデバイスへの応用が期待されている。

産総研では、高温動作、冷却不要および大電流密度動作を可能とするショットキダイオード整流素子の開発を目的に研究を進めてきた。従来、ショットキ接合にはAl、Au、Mo、Ptなどの金属やタングステンカーバイド(WC)などの化合物が用いられてきたが、界面での剥離や耐熱性などに問題があったが、今回、Ruをダイヤモンドと組み合わせることで、これらの課題を解決できることを解明した。

今回、Ruとダイヤモンドを用いてダイオード整流素子を試作。ダイヤモンド基板上に活性層を積層し、その上に耐熱Ti/Mo/Au積層オーミック金属を用いたオーミック電極ならびにショットキ電極を形成した。

今回開発した素子部分の拡大模式断面図(素子サイズは2mm×2mm)

試作された素子では、400℃で1500時間および500℃で250時間の高温保存試験を行った後も、素子に劣化が生じていないことが確認された。ショットキ接合の諸特性についても、400℃/1500時間の試験後でも変化がなかったという。

400℃高温保存試験による特性変化

これらのデータを基に推定すると、通常のパワーデバイスの自己発熱温度レベルである200~250℃程度では、冷却しない場合でも数十年は動作が可能であるという。

なお産総研では、ダイヤモンドを用いたパワーデバイスの実用化は、大電流が流せる1cm角級のデバイスを実現することが必要としており、そのための大面積基板製造技術、高品質エピタキシャル膜成長技術、デバイス設計技術などの開発を進めていくとする。

また、今回開発したのはショットキ型ダイオード整流素子だが、トランジスタ素子についても並行して研究を進め、冷却のための電力が不要になる省エネルギー型パワーデバイスの実現を目指すという。