米Red Herringが10月14日から3日間、スウェーデン・ストックホルムで恒例の技術ベンチャー投資イベント「ETRE(European Technology Roundtable Exhibition) 08」を開催した。欧米を中心に、世界のベンチャーキャピタルとベンチャー企業が集まることから、毎年景気の話は避けられないが、今年はステージでもランチ会場でも、世界を覆う金融不安の話が聞かれた。会期中、あちこちで聞かれた声を拾ってみた。

「資本主義の終わりか?」と問いかけるのは、19年前にETREを開始したAlex Vieux氏(Red Herringの会長兼CEO)だ。普段は冗談と皮肉混じりにスピーカーを質問攻めにあわせるVieux氏だが、真剣な顔で自問するかのように切り出した。ちょうどその前の週に主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で金融危機回避のために協調するという行動計画案を提示した。IPOの数は激変し、「土台からのシフトが起こっている」と言う。この19年にはなかったことだというVieux氏、「今年の1月に信じていたことが信じられない」と語る。

初日一発目の基調講演は、著名な投資家Tim Draper氏(Draper Fisher Jurvetson創業者兼マネージングディレクター)だ。投資家一族のDraperファミリー出身のDraper氏は、アフィリエイトにより世界各都市に進出、「ローカルビジネスであるベンチャー投資を国際ビジネスに変えた人物」とVieux氏は評価する。

Draper氏はステージで「楽観主義」を何度も強調しながら、自由と市場主義の視点から解決策を解いてみせる。「市場が解決する」というDraper氏は、「敗者には失敗させろ」と政府による公的資金投入に強い批判を示す。

Draper氏は、GDPの成長率の推移などから資本主義、市場主導主義の成功は立証されていると述べ、「Sarbanes-Oxley法が良い例だ。政府の規制が強くなればなるほど、企業は遠のく」と政府による規制に真っ向から反対した。

ETREのステージで論議するAlex Vieux氏(左)とTim Draper氏(右)

これに対し、2日目に登場した地元投資家で、同じく投資家一族出身のMarcus Wallenberg氏(スウェーデン大手銀行SEB会長)は、同じ楽観論を解くが、政府の公的資金注入は不可欠と見ている。1990年代初めに金融危機を経験した立場から、「(危機を乗り越えるには、まず)すばやい信頼の回復が必要」とし、政府の公的資金を支援した。同じく、米RealNetworksのCEO、Rob Glaser氏も米国政府の判断を支持して次のように語る。「人々が金融システムを信頼できなくなったのが最大の問題だ。市場は信頼に基づく。政府介入は信頼を取り戻すために不可欠だ」 - Glaser氏がこう述べると、会場からは拍手が起こった。