農村部はULCPCで情報格差も解消?

では、国産ベンダはどのような状況なのか。2007年に中国電子学会省エネ作業推進委員会が設立され、そこには、PCベンダの聯想(Lenovo)、SIerの東軟(Neusoft)、ネットワーク機器の華為(Huawei)、サーバベンダの浪潮(Inspur)など国産大手ベンダ9社が名前を連ねる。この中でも、"環保五輪"と銘打った北京五輪で公式PCベンダだったLenovoは、米コンピュータベンダのようなトータルな省エネソリューションこそないが、PC、サーバの製品ベースで省エネ化を進める。日本で設計・開発する「ThinkPad」はもちろん、デスクトップの「ThinkCentre」も2008年モデルのほとんどが「エナジースター4.0」(IT機器を対象とした国際的な省エネ認定基準の最新版)に対応している。

なおLenovoは、GoogleやIntelが2010年までにIT機器のCO2排出量削減を目指して設立した「Climate Savers Computing Initiative」のボードメンバでもあり、現状ではムダが目立つ中国の国産PCも、Lenovoがリードする形で徐々にスマートになっていくだろう。中国では1億台以上のPCが市中で稼働していると言われる。この分野での省エネ化は効果が大きい。

また、低コス性と共に"グリーン性"が注目を集めるULCPC(Ultra Low Cost PC)の動向が注目される。これまでHPが台湾のVIA Technologiesのx86互換・省電力プロセッサを搭載した製品を発売していたが、最近になり、DellがIntel ATOMを搭載したULCPCを中国の市場に投入した。

そのHP/Dell製品にしても、ULCPCの代表格である台湾ASUS「Eee PC」にしても、価格は2000~3000元台。中国農村部の住む平均的な人からすれば高嶺の花である(農村部平均所得は約3600元)。中国は環保と共に"城郷差距"(都市農村格差)の解消を重要政策テーマに掲げており、今後、どのような助成策が出てくるかが、農村部でのULCPC普及を左右する。

ともあれ、北京五輪を境にして中国は、経済発展一辺倒からサステーナブルな社会に向け、重いカジをギリギリと切り始めたのは間違いないだろう(余りにも巨大な社会なので、その動きは緩慢に見えるかもしれないが)。その中で緑色ITへの取り組みも活発化してきそうな気配はある。