米IBMは6月5日(現地時間)、半導体回路を"スタック(積み重ね)"した立体構造内に水を通すことで3Dチップを冷却する技術の開発を発表した。データセンターのグリーンIT化を推進する有望な技術であるとともに、今後10年間ムーアの法則を大きく進展させる可能性があるという。

これは、ドイツのベルリンに拠点を置く独Fraunhofer Instituteとの共同開発で実現したもの。3Dスタックされたチップ内部に水が通過するパイプを配置、チップ内の各レイヤーを直接冷却する。1年前にIBMが発表した3Dスタック技術で製造されたチップは、通常のマルチプロセッサシステムよりもデータの伝送距離を短くできるものの、高速化と高密度化に伴う発熱の増加という課題を抱えていた。例えば4平方センチメートルの面積と1ミリの薄さで1キロワット分の発熱がある。これは一般的なホットプレートの10倍にあたる。そのため3D構造に適した効率的な冷却方法が求められていた。

水が通過するパイプを備えた3Dチップ

今回IBMは1センチ四方の液冷プロトタイプのデモストレーションを行った。発熱源となる2つのダイの間に冷却用のレイヤーを挟み、この中に冷却用の水を通すための微細なパイプを張り巡らす。冷却用レイヤーはおよそ100ミクロンの高さで、垂直方向に1平方センチあたり1万本のダイ間インターコネクトが配置されている。このテストチップの実験結果から、IBMの技術者はシミュレーションを通じて、4平方センチのフットプリントで1平方センチあたり180ワットまでの冷却能力が可能だと見ている。