「特許プール方式」については、二つの見方が存在する。

中国TVメーカーがデジタルTV技術分野で取得している特許は、ほぼ七割が外観デザイン、工業デザインに関するもの。一方、ATSC規格に採用されている特許は、モデム、インタフェースなどに関するものが中心だ。このため、中彩聯がATSCメンバー企業との特許交換、または相互免除を図ろうとしても、中国側の特許プールの中には相手に認めてもらうほどの特許が皆無に近い。したがって、特許プールでATSCメンバー企業の譲歩を引き出す戦術は、これだけでも期待薄という悲観的な見方があるのだ。

これに対し、前出の羅秋林氏は次のように反論し、対抗心をあらわにしている。

「規格に採用されている特許と、そうでない特許には、それぞれの機能がある。特許競合はまさに専門性の高いチェスゲームのようなものだ。駒は使い方によって威力が全然違ってくる。単純に駒の価値や強さを比較しても全く意味はない。要は布陣をみること。チェスゲームの世界で、ポーンが最後の勝敗を決める場合もある。これは特許プールについても言える。今後、特許プールには規格に採用されるレベルのコア技術特許があって然るべきだ」

「外国企業特許包囲網」や、中国側の対抗策としての「特許プール」は、そもそも中国のTVメーカーが独自のコア技術、知的財産権を持っていないことから由来するものだ。最新のデータによれば、中国国内で特許出願した中国企業は、全体の1%に過ぎない。独自の知的財産権を持っている企業は何と僅か0.03%なのだ。別のデータでは、昨年の中国国内における特許出願本数のトップ50社の中に、中国企業は華為など四社のみだった。外国企業の独資企業や合弁企業が圧倒的に多いというのが実情だ。こうした状況を考えると、中国企業、特に海外市場に積極進出している家電メーカーなどが積極的なイノベーションをおこない、独自の知的財産権と自主ブランドをもって「外国企業特許包囲網」の突破を図ることは容易なことではない。

TVだけではない。昨年、中国製DVDプレーヤーの輸出は高額の特許使用料というカベの前に激減し、国内市場での販売も大幅に衰退した。今年2月には、韓国のLG電子が同社のデジタルTVの特許4件を侵害したとしてTCL集団を訴えている。3月、ドイツ税関がイタリアのSisvelの関連特許を侵害しているとして、CeBITに出展する華旗、紐曼など12社の中国MP3メーカーの製品を押収した。

中彩聯の集団交渉はある意味で「その場凌ぎ」の色が濃く、持続的な効果は期待できないとみるべきだ。記憶に新しい一連の教訓を前に、特許プールの構築や拡充、そして、それらの巧みな活用こそが抜本的な突破策だと、中彩聯も中国TVメーカーも認識しているはず。中国メーカーは、今後独自のイノベーション、特許戦略の充実に向け、今後一気に動くはずだ。そうでなければ、長期的かつ持続的な当該産業の成長に深刻な問題が生じるからにほかならない。