LEDの点灯回路をゼロから作り直すことを決意
第4回目となる今回は、回路を見直し、この連載の第1回から第3回までで紹介した基本回路に、D型フリップフロップを2段追加し、パルス幅(LEDが点灯する時間)を2倍と4倍に変えてみたいと思い、回路をゼロから作り直し、シャーシ、トランス、ダイオードブリッジなど基本部品を見直すことから始めた。
17年前に作った初期のLED点滅回路は、非常に単純だが、信頼性が高かった。しかし、実験的に手探りで作ったために無駄な部品を使っていた。そこで今回はできるだけ正確に回路常数などを計算し、必要最小限の部品で作ることにしたわけだが、実際に作業をしてみて、歴史の流れを感じてしまった。
D型フリップフロップには、1つのICにフリップフロップが2個入った「74HC74AP」を利用した。秋葉原で購入する時、店員に74シリーズの標準ロジックが欲しいので、74LSシリーズの製品があるかを尋ねた。すると「LSシリーズはありません。HCでもかまいませんか」と聞かれた。LSシリーズはバイポーラのTTL、HCはCMOSである。もちろん74HCのD型フリップフロップを購入したが、時代の流れを感じたのだ。
また、秋葉原の部品街には抵抗やコンデンサなどの受動部品を扱う店は多いが、トランジスタを扱う店が少なくなった。その上、なじみの店が定休日であったため、別の店でnpnパワートランジスタとして「2SC2335」を購入しようとしたら、東芝はもう生産していない、と言われた。代わりの300V、1A程度のトランジスタを買おうとしたら製品名がわからない。店員からはスペックを言われても製品名を言わなければどれなのかわからないと言われ、こちらが戸惑いこともあったが、最終的にはなんとか若松通商で購入することができた。
TBS1022で新回路の動作をチェック
さて、前回は、タイマーからの出力パルスをテクトロニクスのオシロスコープ「TBS1022」で測定したが、今回はタイマーからの出力をクロックとして、D型フリップフロップに入力した。D型フリップフロップはデータの立ち上がりエッジで変化するため、次の立ち上がりまでデータが保持されることになる。この結果、クロックの周期を2倍にできるという特性を備える(図1)。この特長を利用してクロックのオン時間を2倍に増やすことができる。D型フリップフロップを2個直結すると、クロック周期は4倍に長くなる。
このようにして、オン時間を2秒、4秒、8秒という点滅回路を作り、これをオシロスコープで確認した。このオシロスコープは個人でも買える価格ながら、入力チャンネルを2個備えているため、チャンネル1でタイマーからの出力を見て、チャンネル2でD型フリップフロップ1段からの出力を見ることができる。その例を図2に示す。周期が2倍に広がり、オン時間が2倍の長さになったことが見える。
次に、2段目のD型フリップフロップからの出力もチェックしてみる。今度はチャンネル1に2段目のD型フリップフロップからの出力につないだ。さらに周期が4倍になっている(図3)。これも2つの波形を同時に見ることができる。
新型の点滅回路では、オシロスコープを使って信号を「可視化」できるが、端子をつまみやすくするため、タイマーICからの出力、D型フリップフロップの出力、2段目のD型フリップフロップ出力、電源電圧Vcc、グランドをすべてプリント基板の表側から取り出せるように端子を伸ばした(図4)。通常の回路には、このような端子は不要だが、今回はビデオ撮影も併せて、DFT(Design for Testing:テストしやすくするための設計)を採り入れることにした。
最終回を予定している次回は、論理回路の5V出力から、140VのLEDストリングをドライブするためのパワートランジスタ回路の設計と実際のLEDの点滅とオシロスコープの点滅との対応をチェックする予定。2013年のクリスマスイルミネーションに備えて、どのLEDを短くあるいは長く点滅させるかを考えるのが楽しみなのである。
(次回に続く)