17年前にLEDクリスマスイルミネーションを作ろうと決意して以降、自宅の周りに飾ることを毎年続けてきた。最近では、近所の子供たちが楽しみしており、「今年はいつから点灯するのですか?」と聞かれるたびに、実はやめられなくなってきている。図1の2階の部分が自作のイルミネーションである。基本的なポリシーとして、自分でできる範囲のことしかやらない、業者には依頼しない、をモットーとしている。だから持続できるのかもしれない。

図1 自宅に飾り付けたLEDイルミネーション(自作は2階部分のみ)

LEDの基本動作を理解する

テクトロニクス社の新型オシロスコープ「TBS1022」を使って、自作のLEDイルミネーションをチェックしてみようという今回の連載。第2回目となる今回は、LEDの基本的な動作についての簡単な紹介と、イルミネーション用LEDストリングの基本的な波形チェックを試みた。LEDは光るpn接合半導体ダイオードである。順方向(p型側にプラス)に電圧をかけるとpn接合に電流が流れ、電子・正孔の再結合により発光する。その場合のpn接合の作りつけ電圧(built-in voltage)が2.4V~3Vという順方向電圧となる。この電圧は半導体材料の物性で決まるため、同じ材料を使う限りこの電圧はほとんど変わらない。厳密には機械的なストレスで結晶格子が広がったり狭まったりするとこのエネルギーバンドギャップに起因する順方向電圧はわずかだが変わる。ちなみにシリコンには電流を流しても光らない。物性的に間接遷移型半導体だからである。

GaAsやGaNを使ったLEDは1.5Vの乾電池1個では光らない。だいたい2.3V以上は必要で、青色LED(白色LED)は3V程度が必要となる。白色LEDは青色LEDチップに黄色い蛍光塗料をかぶせることで実現しているものが多い。黄色は、赤・緑・青という光の三原色の赤と緑を混ぜた色、と考えれば、黄色と青で白色になることは色温度分布を見なくても定性的に理解できるだろう。

LED1個の順方向電圧が2.4Vであるとして50個直列に接続すると120Vに達する(図2)。LEDの順方向電圧は、赤、橙、黄、緑といった色によって実は微妙に違う。物性乗数(エネルギーバンドギャップ)が異なるからだ。GaAsではなくGaPあるいはGaAsPなど違いによるものだ。バンドギャップが大きいほど発光波長は短い。さらに同じ半導体材料でも、成分のバラつきによるエネルギーバンドギャップがバラつく。青色と白色LEDは共にGaN系で光の波長は青色であるから同じ3V程度とみてよい。イルミネーションでは50個のLEDストリングを1つの単位として接続している。

図2 LEDを50個直列に接続

「あれ? 家庭用の電源電圧は100Vではなかったか? 120Vなら昇圧しなければならないのでは」と思われる方もいるだろう。確かに商用電圧100Vは交流であるため100Vは実効値であり、ピーク値はサイン波だと100V×√2の約141Vに達する。100Vの交流電圧を全波整流すると、約135~140Vの直流電圧に変わる(図3)。サインカーブの上半分の隙間の電荷をコンデンサが十分埋めてしまえばピーク値付近がややリップルを持ちながらも直流に近づいていく。このため、全波整流をコンデンサで平滑すればその直流電圧値は100Vより高い135~140V程度に上げることができる。図3の赤い線で描かれたわずかにリップルの乗った電圧値の平均値が135~140Vのいずれかになる。

図3 全波整流波形(赤い線は平滑後の曲線)

イルミネーションでは、いろいろな色のLEDをつなぐことが多い。基本的には50個のストリングを並列に何本も接続することにした。ただ、50個直列につないでもすべてのLEDストリングの順方向電圧が120Vぴったりとは限らない。そこで、多少電圧が違ってもほぼ同じ電流が流れるように1kΩの抵抗を取り付けた。LEDストリング全体の電圧値が多少バラついても同じような電流値を確保するためである。この抵抗の代わりに定電流回路を導入するという考えが市販のLEDドライバとして売られているが、コスト高になってしまうのでやめた。

イルミネーション用に作製したLEDストリングの波形をチェック

まず、オシロスコープ「TBS1022」を使って、全波整流波形を確認してみる。全波整流回路にはダイオード4本からなるブリッジ回路ICの「D3SB 60」を秋葉原で購入した。これは耐圧600Vで、電流4Aを流せる。このダイオードブリッジの出力をオシロで観測した(図4)。実際の電源出力回路には33μFの電解コンデンサがつながれているため、すでに平滑効果が出ており、ほとんどフラット(直流)な134Vを示した。この時は、出力に何もつないでいない。

図4 電源出力の無負荷での波形(きれいな直流を示すが後ろにあるLEDは光っていない)

この後、負荷となるLEDストリングをつなぐと、電圧波形は若干波を打つような波形を描いた(図5)。しかも電圧値(平均)は132Vに少し下がった。つまりLEDが光っている間は平均電圧136Vのややリップル波形で、光っていない間は134Vのまっすぐな直流を示した。

図5 電源に負荷(LEDを50個直列)をかけた波形(後ろのLEDは光っているが少し電圧が低下しリップルが加わる)

なぜこうなるか。無負荷での直流はコンデンサにたまった電荷をすべて、上半分のサイン波の谷間を埋めるために使われている。いわゆる平滑コンデンサとは、このサイン波を滑らかにするために電荷を供給する役割を果たす。しかし、負荷をかけると負荷に電流が流れるため、電流に相当する電荷がLED側に使われてしまう。このため、電源側のサイン波の谷間を十分に埋めることができずに、図5のようなリップル波形になってしまうのである。

ただし、この程度のリップル電圧でLEDの電圧が変わっても明るさの変化は眼にはわからない。もっと大きな平滑コンデンサを利用すればリップルはもっとスムーズになるが、コストアップになるだけであり、LEDの光にはほとんど影響しないため、この回路を使った。

この実験では、ダイオードブリッジの出力値もさらに2番目のコンデンサで平滑化した後もさほど変わらない。オシロを活用することで、出力電圧の後に33μFのコンデンサを1つだけ設ける方がコスト的に有利であることが示された例と言えるだろう。

次回は、点滅回路の電源回路を見ていくことにしたい。

(次回に続く)