2016年のNHK大河ドラマは真田一族に着目した『真田丸』。その真田一族の"聖地"を巡る企画の最終回の第4回では、大坂の陣で果てた幸村(※)の兄であり、真田の名を後世に伝えた信之ゆかりの地・松代(長野県長野市)を紹介しよう。

松代には全国的にも貴重な藩主御殿跡である「真田邸(新御殿)」が残されている

松代 - 信之が築いた真田家安住の地

関ヶ原の戦いで幸村の父・昌幸と幸村が西軍に味方した一方、信之は東軍に与した。信之の妻・小松姫が、家康の重臣・本多忠勝の娘だったためだ。昌幸と幸村が家康に敵したにも関わらず、信之は大坂の陣後、上田から松代に加増転封された。信之が家康からいかに信頼を得ていたかが分かるだろう。

現在の松代には、信之が生涯を費やして発展に力を注いだ城下町がよく残っている。藩主の居館で明治に入っても真田家の私邸として使われた「真田邸(新御殿)」や、開明的な教育がなされていた藩校の「旧文武学校」、真田家を支えた家臣らの屋敷跡などが、江戸時代の面影を今に伝える。

城下には長屋門や屋敷の塀が多く、タイムスリップした気分になれる

平成になってよみがえった松代城

同じ長野県の上田から松代に移った信之にとって、新たな居城となったのが「松代城」だ。明治維新をむかえるまで約250年間、城は真田家統治のシンボルであり続けた。

平成に復元された「松代城」の正門。松代をぐるりと囲む山並み込みで城歩きを楽しみたい

現在は本丸を中心に、水堀や石垣、門などがよく整備されているが、20年ほど前までは城の面影はほぼ失われていた。明治の廃城令によって城は埋め立てられ、学校や運動場として利用されていた。しかし平成に入り、江戸時代の設計図や発掘調査をもとにして、本丸と二の丸を中心に往時の威容を回復したのだ。

城の出入り口を守る門や天守台、二の丸の土塁など、城は小ぶりながら見どころが多い。水堀と石垣のコントラストも美しく、春は桜の名所としてもにぎわう。四季を感じながら城を歩いてみたい。

天守台跡と伝わる石垣。ただし、ここに天守が建っていたことはなかったようだ

一族の歴史が凝縮された真田宝物館

松代の城下町には250年の治政を伝える観光地が多い。東に位置する「長国寺」の信之御霊屋は、黒漆の社殿と細やかな装飾が美しい国の重要文化財である(見学は要予約)。信之の妻・小松姫の菩提を弔う「大英寺」など、真田家との関わりが深い古刹も多い。また、「象山神社」や「象山記念館」など、松代藩が輩出した幕末の偉人として著名な佐久間象山ゆかりの場所も残されている。これらの観光地は徒歩圏内に集中しているので、1日かけてじっくり散策してみてはいかがだろうか。

信之の菩提寺である「長国寺」の本堂。屋根の六文銭が凛々しい

最後に、松代散策で外せないのが「真田宝物館」だ。肖像画や甲冑、刀剣、書状など真田家伝来の宝物が展示されているばかりではなく、真田一族の歴史や江戸時代の真田家の治政を分かりやすく解説している。文具やシールなど、オリジナルグッズも多数用意されていてお土産にももってこいだ。真田一族をもっとも身近に感じられる"聖地"と言えるかもしれない。

真田一族の歴史と至宝が凝縮されている「真田宝物館」。時間をかけて楽しみたい

そして本日1月10日は、いよいよ『真田丸』が始まる。三谷幸喜がつむぐ真田家の歴史を、堺雅人をはじめとした豪華キャストが魅せてくれる。そんな真田家一家の生き様をとくとご覧あれ。

※ドラマでは真田"信繁"の名前が用いられるが、今回は一般に知られている"幸村"を使用

(文・写真/かみゆ歴史編集部 滝沢弘康)

筆者プロフィール : かみゆ歴史編集部

「歴史はエンタテインメント! 」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで、歴史関連の編集制作を行う編集部。ジャンルは戦国、幕末を中心に古今東西を問わず、アート、カルチャー、宗教・神話、観光ガイドなど幅広く手がける。おもな編集制作物に『真田一族巡礼の旅ガイド』(KKベストセラーズ)、『日本の仏像巡礼名鑑』(廣済堂出版)、『日本の山城100名城』『春秋戦国500年の興亡』(どちらも洋泉社)、『戦国武将イラスト名鑑』(学研パブリッシング)、『廃城をゆく』シリーズ(イカロス出版)など
「かみゆ」