こんにちは。アートユニットのゼロバイゼロです。メンバー全員が会社で働くかたわらで活動していて、光や水、音など自然物をテーマに作品を作っています。

前回は、サテリテ参加までの苦難の道のりについてお話させていただきました。今回は、出展にあたって必要となる「お金」や「ヒト」、そしてミラノと日本の展示会の違いについて語って行ければと思います。

音に反応するスティック型照明「Kvel」イメージスケッチ

多額の出展費用という「壁」

今回僕たちが参加した「サローネ・サテリテ」に関して言えば、作品を出すための費用は全て自腹です。出展費用の額は約4000ユーロ!(2016年6月22日現在のレートで日本円換算すると約47万円。高い…!)

もちろん、出展費用だけではありません。作品自身の制作費用の他に、渡航費・宿泊費、ブース設営費用(主催者経由で施工会社に依頼する)などがかかり、出展費用のトータルは場所代を含めると100万円近くになります。この資金をどうやって集めるかも、前回お話してきた「壁」のひとつと言えるかと思います。

僕たちの出展作品は2つあって、その内ひとつが大阪大学とのコラボレーションで制作したものだったので、そちらのプロトタイプの制作費用は研究費でまかなうことができました。全額ポケットマネーで出展するには大きな額ですし、調べた限り政府やファンド、財団などによる、若手デザイナーの育成のための補助制度は色々ありますので、これから挑戦しようとしている人には積極的に活用してほしいです。

サローネ・サテリテのゼロバイゼロブース。設営はすべてメンバーや手伝ってくれた後輩たちで行いました

協力してくれるヒトの大切さ

展示会は思った以上に沢山の人出が必要になります。この人員を確保しなければ、プロトタイプの制作に集中できません。僕たちは、以下の様な友人・知人に手助けしていただきました。

・パンフレットをデザインしてくれたグラフィックデザイナー
・パンフレットにのせる写真を撮ってくれたカメラマン
・車を確保し、あらかじめ備品を購入してくれていた、イタリア在住の知人
・設営を手伝ってくれた大学の後輩
・展示期間中ずっとブースに人が張り付いて説明員をしてくれた友人

彼ら彼女らの助けがなければサローネへの出展はできませんでした。本当に感謝しています。

ミラノと日本の違い

実際に出展してみると、日本の展示会との違いを色々と感じました。日本では、展示会というとある種のお祭り騒ぎというか、PRの意味合いが強いのですが、欧米での展示会はビジネスがメインの場となっていました。

僕たちが受けた質問では、「納期や販売予定価格はどうか?」、「販売戦略はどうしているのか?」「EU圏での流通ルートは確保しているか?」など、実践的な内容が多かったのが印象的でした。実は、日本の展示会だと、声をかけていただいても「いいデザインですねー」のような感想で終わってしまうことが多いのです。それも大事なフィードバックですが、ミラノでは自分の作品が即ビジネスに組み込まれていく感覚が非常にエキサイティングでした。

メディア関係者の方も多く、サテリテの注目度の高さが伺えます。日本だと、ここまで耳目をあつめるデザインイベントは残念ながら存在しません。サテリテのみならず、ミラノ・サローネや周辺イベント全体から感じる、デザインをビジネスの中心としてとらえている大きなうねりは日本にいては経験できなかったもので、非常に刺激を受けました。

また、世界中から僕達と近い年齢の人達が集まり、各々のクリエイティビティを感じられたことも大きな収穫です。僕達は隣のブースに出展していたマレーシア出身のデザイングループとは大変仲良くなり、今も交流があります。 こういった仲間との出会いはかけがえの無いものです。

次回で最終回。ミラノで得たモノゴトを振り返ってみて得た気づきについてお話したいと思います。