2013年春にオープンしたクリーニング店舗「re:wash(リウォッシュ)」では、iPadを使ったレジシステムと、iPadでクレジットサービスが利用可能なPayPal Hereを導入している。

「クレジット決済ができるクリーニング店は、まだあまりないので物珍しがられます」と語るのは、re:washを運営するアイタル 代表取締役 石倉洋平氏だ。同店では、PayPal Here導入でクレジットカードも使えるクリーニング店として客単価を向上させたという。

クリーニング店舗「re:wash(リウォッシュ)」

新しいスタイルのクリーニング店舗をつくりたい

アイタル 代表取締役 石倉洋平氏

長年大手クリーニング店で高級衣服を担当していた石倉氏は、「ファッション業界の片隅にいながら殺風景なクリーニング店のイメージを払しょくし、近年縮小傾向にあるクリーニング業界を盛り上げたい」と思いを語る。

おしゃれで気持ちのよい空間を提供するクリーニング店があれば、ファッション好きな顧客が自身の大切な衣服を預けに来るニーズはあると考えたという。こだわりのクリーニング店をコンセプトにしている同店は、店舗のインテリアを白い壁と木張りでおしゃれに装飾し、洗剤は肌と環境に優しいオーストラリアやベルギーのオーガニック洗剤を採用するなど工夫を凝らす。

外から見ると「喫茶店や雑貨屋と間違われ、通り過ぎてしまわれるお客さまも多い」と石倉氏は笑う。店舗の新規オープンに伴い、レジ端末を探していたところ、展示会でタイミング良く出会ったのが、iPadを使ったレジシステムと、PayPal Hereによるクレジット決済サービスだったという。

「iPadを使ったレジは、非常にスタイリッシュで当店のねらうイメージにぴったりでした。また、クレジット決済ができるクリーニング店はまだほとんどないので、PayPal Hereを使ってクレジット決済が可能であるとアピールすることは、差別化につながると思い即導入を決定しました」(石倉氏)

iPadレジ、PayPal Here導入の利点は、コストパフォーマンスの良さと手軽さもあった。既存のレジシステム、クレジット決済サービスと比べ導入コストは半分以下で済む。導入に関わる工事も不要なので、すぐに利用可能になる。新規オープン店でも手軽に導入できた。

店舗でiPad片手に接客する石倉氏

iPadを活用したレジシステム導入

同店が導入したiPadレジは、ネクストベリー社の「StarPOS for cleaning」。クリーニング業に特化したiPad専用POSレジだ。この「StarPOS for cleaning」(以下StarPOS)を、店舗レジにはB5サイズのiPad、デリバリーレジには持ち運びに便利な小型A6サイズのiPad miniと使い分けて活用している。

StarPOSの利点は、何より操作が簡単なところだ。iPadの画面を見ながら、顧客情報や預かり品、個数を選択すれば、金額が自動集計される。仕上がり日は、カレンダー機能から簡単に登録、検索も可能だ。入力後は、iPad専用レシート端末から顧客と店舗用の預かり票が発行される。登録した顧客情報の履歴は、商品・日付・名前など多様な条件ですぐに検索可能なので、注文履歴や応対履歴もiPadから簡単に検索できる。

とりわけ便利なのは、店舗用iPadから登録した売上も、デリバリー用iPad miniから登録した売上も、すべてサーバー上で集約され即時集計が可能な点だ。デリバリー先の売上を店舗に戻っていちいち登録し直す必要がない。また、登録内容は、後から月別や商品別などで分析することも可能だ。

店舗用iPad(左)、デリバリ用のiPad miniレジとプリントアウトした預かり票(右)

「従来のクリーニング店のレジシステムは、大型店舗では大型レジを利用していますが、小型店舗は手書きで預かり表を作成し、レジに手打ちする方法もよく見られます。閉店後に自分で集計し直したり、預かり表の管理を手作業で行うのは、非効率ですよね。iPadレジは、集計も顧客管理もこれ1つで行えるので重宝しています」(石倉氏)

実際の活用シーンについては、以下の動画をご覧いただきたい。


クリーニングデリバリーで、クレジットカード決済が可能に

iPadレジと並行して導入したのが、PayPal Hereだ。PayPal Hereアプリを立ち上げて、専用カードリーダーをスマートフォンやタブレットにつなげるだけで、簡単にクレジットカード決済ができる。月額利用料は無料で、クレジットカードの決済手数料は、1取引あたりわずか3.24%だ。

同店では、iPadとiPhoneでPayPal Hereを活用している。どちらの機種でも、専用カードリーダー(青色の器具)をイヤフォンジャックに装着すれば、その場ですぐに利用が可能だ。利用方法は、専用カードリーダーにクレジットカードを差し込みアプリ画面に利用金額を入力する。iPadやiPhone画面上に直接手書きでサインすれば、クレジット決済が完了する。利用情報は、PayPalからのメールで顧客に通知される。

クリーニング店を利用する際、面倒なのは洗濯物を抱えて店頭と自宅を往復することだろう。衣替えの時期にもなると、かさばって重量のある衣服や布団を手持ちで店頭へ持ち込み、再び自宅へ持ち帰るのは手間が掛かる。そこでデリバリーサービスは重宝される。利用顧客は、自身でクリーニング品の持ち運びが不要な分、まとめた量のクリーニングを利用するケースが多い。そのため、デリバリー利用顧客は、店舗利用顧客に比べ客単価が2倍弱程度も高い。まとまった金額のクリーニング料金を支払うことの多いデリバリーサービス時は、玄関先でもクレジット決済が行えるPayPal Hereが好都合だ。

「デリバリー先でクレジットカードも使えますとお伝えすると、お客さまから驚かれますし喜ばれます。iPhoneやiPadを使ったユニークなクレジット決済方法は、まだ馴染のないお客さまも多く、特に画面に手書きでのサインは盛り上がります。デリバリー顧客はリピート率もよく、一度カード決済された顧客は次もカード決済を利用する傾向があります。カードが使えることで、顧客のリピート率向上にもつながっています」(石倉氏)

専用カードリーダー(青色の器具)を取り付ければカード決済可能。サインも画面上に手書きする

iPadを使った業務スタイルの導入が業務の活性化を促す

現状、StarPOS とPayPal Hereはシステム連動していない。PayPal Here決済分の金額は、別途StarPOSに売り上げを打ち込む手間がある。今後は、これを改良しPayPal利用時にも、StarPOSに自動連動して登録されるようシステム改良をベンダーに依頼している。

「iPadというデバイスを通して、顧客管理や集計・分析業務、クレジット決済を便利に利用できるシステムが低コストで利用できるのは非常に便利です。なんでも一人でやらなければならない環境で、こうしたツールを利用して業務効率を良くし、本来やるべきサービスに力を注げるのは嬉しいことです」(石倉氏)

手軽に利用できるiPadレジやカード決済サービスを導入する店舗は、今後ますます拡がりそうだ。