メールの容量制限と深夜メンテナンスに悩まされた従来システム

イクティス システム開発部 渡邉健太郎氏

イクティスは、福岡を中心として全国に14店舗のパチンコ/スロットホールを展開する企業だ。同社ではパチンコ/スロットホールという枠にとらわれることなく、超大型店舗を核にレストランや温浴施設、ゲームセンター、フラワーショップ、ワインセラーなどを盛り込んだ複合型アミューズメントタウンとして提供。「夢は日本のラスベガス作り!」をスローガンに、幅広い年齢層が楽しめる"本物の遊び"を追求している。

同社はこれまで、社内向けには「RISMAIL」をベースとしたメールサーバを構築、社外向けにはレンタルホスティングサービスを使用する構成でビジネスを展開していた。しかし、ここにきてメールサーバ自体の老朽化をはじめとする不具合が目立ってきたことから、システムのリプレースを決断したのである。

システム開発部の渡邉健太郎氏は、当時の様子について、「社内用で使っていたメールは、1人当たりの容量が30MB~50MB程度だったため、1度に添付するファイルは2MBまでに制限し、容量を確認しながらこまめに削除という作業を繰り返していました」と語る。

同社の業務上、本社の販促部でポスターやチラシなどを確認することが多いだけに、このメールの容量制限はかなりのストレスになっていたそうだ。

また、業界の通例とはいえ、ホールが閉店してからの作業が多くなるのもシステム管理においてはネックだった。ネットワーク障害や容量オーバーといったトラブルが発生した際、夜中でも迅速に復旧対応をしなければならない。

「システム開発部は5~6名で構成されており、各自がグループウェアや社内ネットワークなど全体のメンテナンスができるスキルを持っています。今まではこのリソースでトラブル予防と事後対応を行ってきましたが、短時間とはいえシステムの停止は業務に直接的な影響を与えるので、今後は安定性もより重視すべきだと考えました」と、渡邉氏は管理者側から見た従来システムの問題点を語る。

さらに組織管理の面では、グローバルアドレス帳の更新作業に手間がかかったり、メール関連でインタフェースの使い勝手が良くなかったりといった課題もあったという。

社内にも浸透する「Google」のブランド力

リプレースの候補として、同社で以前使用経験のあるLotus NotesやExchange Serverも挙がったが、まずは「Webメールが使える」という条件を重視。これは、「PCが壊れた時にメールデータの復旧や移動が困難である」「メールの送受信が特定の端末に依存してしまう」といった不便さを解消したかったためだ。そして、Webメールの使いやすさやその他のサービス内容を考えた際、Google Appsの存在は群を抜いていたという。

「圧倒的な利便性はもちろんですが、Google Appsで注目すべきは『Google』のブランド力ですね。社内でも個人的にGmailを使っている人が多く、Google Appsも"Gmailの社内版"というだけで大半が理解してくれました」と渡邉氏。同社では最終的に200ユーザーアカウントを導入したが、約3割がGmailの使用経験者だったそうだ。個人でのスマートフォン所有率増加も、Gmail利用率の向上に拍車をかけている要因だろう。

こうしてイクティスは、2011年の秋頃からリプレースの検討を開始。12月から1月にかけてシステム部門での事前確認を行った後、2012年2月に全社への一斉導入を実施した。

事前確認で注意した点として、渡邉氏は「セキュリティ関連機能のチェックは念入りに行いました。Gmailというネームバリューがある反面、"誰でもどこでも使える"というイメージが強いと思います。それはメリットでもあるのですが、導入当初はセキュリティを重視し、社外利用に制限をかけたかったんです。そうした点で、Google AppsはIPアドレスによるアクセス制限機能などがあって便利ですね」と語る。

実際、同社では今のところ経営者層も含めてノートPCやスマートフォンからのアクセスを禁止している。モバイル端末を使ったアクセスのニーズはあるが、現状ではメールがメインとなっているため、ドキュメントやカレンダーなどのコンテンツが充実してからモバイルアクセスの解禁を考えているそうだ。

導入前後の社員教育に関しては、特にセミナーや勉強会を開催することなく、Googleサイトで簡単なマニュアルを作成した程度。メール機能に関する疑問点などは、簡単なやり取りだけで済んだという。これは、「本社・店舗共にITリテラシーの高い人材が揃っている」「社員の平均年齢が若いため、新しい技術を柔軟に受け入れられる」といったことが大きく関係しているのだろう。

社内動画を接客コンテストに活用

メール以外に関しては、Googleビデオを使った社内向け動画も活用中だ。同社では、接客技能を競う全社的なコンテストを実施している。これは各店舗で予選を行い、福岡でファイナリスト8名による決勝を行うという本格的なものだが、この予選の様子や優勝者を社内動画として公開。4月には動画を見た社員たちによる投票で、予選通過者の決定などを行ったそうだ。

「従来のようにDVDメディアへ保存して送付といった手間が不要なだけでなく、メールのURLをクリックするだけで手軽に全社員が参加できるのが魅力です」と、渡邉氏も利用率の高さに笑みを浮かべる。

利用率という点では、社名であるイクティスの"I"を使って「Gmail」を「Imail」、「Googleビデオ」を「I動画」のように愛称で呼んでいるのも、社員たちとシステムの距離を埋める効果的な方法だろう。

イクティスでは現在、Google Appsのほかに自社開発の社内システムも利用している。こちらは主にポータルサイトやグループウェア用途だが、今後は経理や顧客関係のデータを除き、掲示板やワークフローといった部分をGoogle Appsへ移行する考えもあるそうだ。

「今後は社内の情報共有を密にすることで、情報の共有化を促進していきたいですね。そうした意味では、物理的に離れた拠点間のコミュニケーションを円滑にするべく、SNSのようなリアルタイムかつ双方向の情報共有も進めたいと思います。掲示板のように硬いイメージではなく、もう少し柔らかいもの、候補としてはGoogle+辺りでしょうか」と、渡邉氏は次なるビジョンに心を躍らせる。

Google Appsという新しい翼を手に入れたイクティスは、今後も"本物の遊び"で多くの人に笑顔を与えてくれるだろう。