【連載】

コンピュータビジョンのセカイ - 今そこにあるミライ

65 3Dデプスセンサーを用いた注目の新ベンチャー企業(前編)

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新年明けましておめでとうございます。今回から数回にわたって、本編のRGB-Dセンサーの応用編の中休みも兼ねた新春企画として、「3Dデプスセンサーを用いた注目の新ベンチャー企業」というテーマで記事を書かせて頂きます。

本連載ではコンピュータビジョン技術とその応用について紹介しておりますが、コンピュータビジョンに限らずIT・インターネット関連技術を用いた産業分野全般において、(とりわけB2Cの)「新興ベンチャー」が世界中で数多く生まれているのはご存知の通りです。かつての「Web2.0」時代では、PCやカメラデバイスの非力さによりコンピュータビジョンの技術を消費者向け価格で実現しにくかったことや、そもそも画像認識アルゴリズム各種が成熟していなかったこともあり、インターネット界隈ではコンピュータビジョン技術が中心的存在になる例は限られていました。それが近年では、iPhoneをはじめとしたスマートフォンの普及や、Kinectセンサーの登場や画像による3D計測技術の進展、ならびにコンピュータビジョン関連分野での各種パターン認識技術の急速な発展(顔認識、大規模物体認識、その他)などもあり、ここ1~2年でそれらのコンピュータビジョン技術の最新技術の実応用を狙った注目の新興企業が数多く出て来ています。

今回紹介したい企業はたくさんあるのですが、今回はRGB-Dセンサー、3Dスキャナの応用を狙う、サービス開始直前の注目の3社(Occipital、Matterport、Floored)に絞って紹介をいたします。今回紹介する3社を通して、どういった形で今後3Dコンピュータビジョン技術が皆様の生活や仕事に関連するようになるのかのイメージが膨らむはずです。それでは最初は、OccipitalのStructure Sensorという製品から紹介します。

iPadにはめて使えるモバイル3Dセンサー:OccipitalのStructure Sensor

米国のOccipitalという会社が3年の開発期間を経て、現在発売間近の状態にある、iPad向けの一般消費社向けのRGB-Dセンサーが「Structure Sensor」です。まずは、以下のOccipitalのKickStarter向けのPR動画をご覧になってみてください。

Structure Sensorは、非常に小型の3D撮影センサーをiPadに固定して接続し、(PrimeSenseのセンサーのように)RGB-Dデータの動画撮影が可能になる製品です。またその撮影と撮影したデータに対する各種処理が、iOS向けの専用のSDK(software development kit)の提供により可能になる予定です。米国では1台349ドルで販売されます。

このPR動画では、まず「POSSIBILITIES(動画中1:00ごろ)」というセクションで、「このセンサーでどういったことができるようになるか」という可能性の例が順に示されています。iPadで手に持ちながら、部屋の中や対象物体の周囲を動き回りながら撮影することで、物体や空間を3Dスキャンできるという「ハンディ性」と「3Dスキャニング」が強調されています。同じく低価格の大衆向けデプスセンサーであったKinectは,人物姿勢推定技術(今後、この連載で解説予定)を用いた非接触のゲームコントローラとして、「据え置き固定で」用いるものとして登場しました。もちろんKinectやその他の大衆向けRGB-Dセンサーも結構小さいので手で持ちながらスキャンはできるわけですが、このStructure Sensorは小型で軽量でありiPadに据え付け使う事ことによる、ハンディ性を売りとしているのが新しい点で、これにより大きく3Dデータの活用性が広がる可能性があり、注目を集めています。

次に、以下の動画はTechCrunchによる、Occipital CEOへのインタビュー動画です。この動画では、iPad上で動いている各種デモアプリ(物体スキャン、部屋のスキャン、ARアプリなど)が紹介されており、Structure Sensor + iPadでどういった事が実現できるのかの具体的なイメージがつきやすいかと思います。

このようにiPadユーザーであればStructure Sensorを購入すればすぐに3Dスキャンを始めることができます。椅子や机などの物体をスキャンするにはハンディ型の3Dスキャナは持ってこいで、昨年から流行が始まっている3Dプリンタの元データの撮影にも向いています。(ただし、動きながら撮影した各フレームを後で1つのデータに位置合わせしているので、必ずしも正確な3D形状が得られるわけではないことには注意です)。

また、PR動画中ではARでゲームを行うデモアプリも示されています。旧来のRGBカメラのみによるARでは、四角形で平面形状のマーカーや、平面的な地面や壁テーブルは3D的に把握することができませんでした。なぜなら画像で撮影しているので空間全ての3D形状を知りながらCGモデルを表示することはできず、マーカーの2D平面の空間中における3D姿勢を計算する事で、その平面を基準とした3D空間のみを計算することができたからです。

一方、iPadを手に持ちながらStructure Sensorで撮影している3DデプスデータによりARを行うことができるということは、Structure Sensorでデプスが撮影している範囲全ての3D形状を把握しながらARを表示できるということを意味します。つまりは、平面性の少ないでこぼこした表面や、丸い円柱の表面などにも、ただしく3DモデルをARで表示できる可能性が生まれるわけです。そもそも、小型軽量のRGB-DセンサーをiPadにつけて持ち運べるということは、(RGB-Dセンサーが撮影可能な室内に限りますが)どんな場所でも3D空間の形をセンシングして知る事ができるようになるという利点があります。

開発者向けのSDKも同時に登場するこのStructure Sensorの登場で関連アプリも増えて、3Dコンピュータビジョンの応用が大きく広まる可能性があります。注目してみてください。

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インデックス

連載目次
第85回 点群応用(建築編) - LIDARを用いた高精度/広域3Dスキャン
第84回 点群応用(建築編) - 3Dスキャンが活きる建築物の規模
第83回 点群応用(建築編) - 高精度かつ広域な建築物の3Dスキャン
第82回 まだまだ使える人が少ない3D点群処理
第81回 3Dデータで処理を行う利点とは?
第80回 点群データを取得・解析する技術「3D点群」はデプスセンサと何が違うのか?
第79回 動きに反応して映像が変わるインタラクティブなプロジェクションマッピング
第78回 プロジェクションマッピングの原理
第77回 「プロジェクションマッピング」とはどういったものか?
第76回 顔や視線でコントロール
第75回 手や指の動きだけでコントロール
第74回 3Dジェスチャー認識のおおまかな原理
第73回 全身の人物姿勢情報を活用したアプリ例 - 腕の動きからのジェスチャー認識
第72回 Kinectはどのように人物姿勢推定の性能を向上させたのか?
第71回 Kinectの人物姿勢推定手法は学習時にどのような処理を行っているのか?
第70回 どうやってKinectは人体パーツを識別しているのか?
第69回 「人体パーツ識別技術」により実現されているKinect向け人物姿勢推定技術
第68回 まだ完全には解けていない人物姿勢推定の問題
第67回 3D人物姿勢推定の仕組みとナチュラルユーザーインタフェース
第66回 3Dデプスセンサーーを用いた注目の新ベンチャー企業(後編)
第65回 3Dデプスセンサーを用いた注目の新ベンチャー企業(前編)
第64回 アクティブステレオ方式とは違う3D形状の動画計測方式 - ToF形式
第63回 Kinectで3D撮影を行うための条件
第62回 モーションセンサとして見た場合のKinect
第61回 Kinectセンサの動作原理を読み解く
第60回 kinectを用いたビジネスのアイデアを競う「Kinect for Windows Contest」
第59回 Kinectがもたらしたセンシング革命
第58回 Kinectの登場がもたらしたコンピュータビジョン革命
第57回 Kinectなどで使われるデプスセンサを用いた3Dコンピュータビジョン技術
第56回 組込分野でのコンピュータビジョンは使いやすくなったのか(後編)
第55回 組込分野でのコンピュータビジョンは使いやすくなったのか(前編)
第54回 デジタルビデオの安定化処理の注意点
第53回 デジタルビデオの安定化処理の手順
第52回 デジタルビデオの安定化技術の概要
第51回 2種類のオプティカルフローの計算手法
第50回 画素ごと独立した移動量パラメータを割り当てる「オプティカルフロー」
第49回 パラメトリックモーション - 特定の1つの動き表現モデル
第48回 デジタルビデオ安定化技術
第47回 動画に対するシーム・カービング
第46回 メッシュ変形ベースのリターゲティング手法
第45回 重要度マップへの「主観」の追加
第44回 自動作成を行うために用いられることの多い3つの重要度マップ手法
第43回 元画像を「縮小」する時に自然にリサイズする技術 - リターゲティング
第42回 漫画カメラで使われる漫画風画像生成とトゥーンシェーディングの違い
第41回 iPhoneアプリ「漫画カメラ」で使われている画像処理手法その2
第40回 iPhoneアプリ「漫画カメラ」で使われている画像処理手法その1
第39回 iPhoneアプリ「漫画カメラ」に見るコンピュータビジョンの実応用例
第38回 パッチマッチによる画像編集の1つ - リシャッフリング
第37回 パッチ探索をランダムに実行することで高速化を目指す「パッチマッチ」
第36回 インペインティングの手法の1つ - パッチベースの手法
第35回 2つの目的で使われるコンピュータビジョンのインペインティング
第34回 人工知能/ロボット応用で使われるコンピュータビジョン技術(後編)
第33回 人工知能/ロボット応用で使われるコンピュータビジョン技術(前編)
第32回 ホモグラフィ変換における画像間のレジストレーション処理
第31回 張り合わせ先の座標系モデルと移動量の算出
第30回 各画像の「移動量」と「変形量」の算出による特徴点の対応づけ
第29回 キーポイントの検出とSIFT記述子の計算
第28回 パノラマ画像の生成手順
第27回 "画像の張り合わせ"で手軽に作れるようになったパノラマ画像
第26回 身近になったコンピュータビジョン技術を用いた写真・映像の編集技術
第25回 進むステレオカメラのDepth Mapを用いた3D道路表面モデリングの研究
第24回 車線逸脱警告システムにおけるレーン検出の仕組み
第23回 パーティクルフィルタによる観測技術
第22回 前方衝突防止システム - 人物をトラッキングする手法
第21回 前方衝突防止システム - 「平行等位ステレオ」による3次元形状復元
第20回 ビジョンべースの自動車運転手支援システム - 前方衝突防止システム
第19回 MAP推定はどのように行われるのか
第18回 超解像の計算アルゴリズム「MAP推定」
第17回 超解像で高画質化処理を担当する「ボケ補正」
第16回 入力画像が2枚以上(動画)の場合における画像レジストレーション
第15回 1枚画の静止画における画像レジストレーション
第14回 画像の劣化に対する「高解像度化」と「高画質化」のための3つの技術
第13回 超解像における劣化関数で改善すべき2種類の劣化
第12回 高解像かつ高画質の映像を作り出す技術 - 超解像
第11回 「顔検出」を高速化する技術
第10回 顔検出の主流アルゴリズム「Viola-Jones法」
第9回 人間の顔があるかを判断する「顔検出」技術(2) - テンプレートマッチング
第8回 人間の顔があるかを判断する「顔検出」技術(1) - 「顔検出」と「顔認識」
第7回 拡張現実感「AR」(3) - 「ARToolkit」の登場によりARが一気に普及期へ
第6回 拡張現実感「AR」(2) - マーカ有りARとマーカレスARの仕組み
第5回 拡張現実感「AR」(1)
第4回 動画編集技術「マッチムーブ」(3)
第3回 動画編集技術「マッチムーブ」(2)
第2回 動画編集技術「マッチムーブ」(1)
第1回 身近なものとなってきたコンピュータビジョンの世界

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