東京大学は、タイ湾に生息するカツオクジラが立ち泳ぎ採餌をすることを発見したことを発表した。

同成果は、同大 大気海洋研究所・セントアンドリュース大学の岩田高志 研究員、同じく大気海洋研究所の佐藤克文 教授、中央水産研究所、タイ沿岸資源研究所、プーケット海洋生物研究所の共同研究グループによるもの。詳細は、米国の生物学専門学術誌「Current Biology」(オンライン版)に掲載された。

カツオクジラは立ち泳ぎをしながら、水面で口を開け、餌の小魚が口の中に入ってくるのを待つ (出所:東京大学 大気海洋研究所Webサイト)

この餌獲り様式は、カツオクジラを含むナガスクジラ科の動物において従来報告されている突進採餌(餌の群れに向かって口を大きく開け突進する)とは完全に異なるものとなる。研究グループが実施した目視による直接観察と動物に装着した行動記録計とビデオカメラから、カツオクジラは立ち泳ぎをしながら、水面で口を開け、餌の小魚が口の中に入ってくるのを待つ方法で餌を獲っていることが分かった。この立ち泳ぎ採餌は受動的な餌獲り様式であるため、採餌に必要なエネルギーは、突進採餌に比べて小さいことが考えられる。

調査海域のタイ湾は富栄養化によって水面付近以外は貧酸素な環境となっているため、餌の小魚も水面にしか生息できない環境となっている。カツオクジラの立ち泳ぎ採餌は、水面に広がる餌を獲るのに効率的であると考えられる。

立ち泳ぎ採餌は単体の大人もしくは大人と仔供のペアで観察することができる。大人と仔供のペアでの立ち泳ぎ採餌は、社会学習であることが示唆される。また、他の地域のカツオクジラにおいて、立ち泳ぎ採餌の報告が無いことから、この行動は地域特異的な行動であることが分かる。社会学習や地域特異的な行動という点から、タイ湾で見られる立ち泳ぎ採餌は文化的行動である可能性が考えられた。

研究グループは、今回の結果に関して、カツオクジラがさまざまな環境に対して、柔軟に対応する能力をもつことを示すものであると説明している。