ローレンス・バークレー国立研究所らの研究チームは、二次元薄膜材料に電子を注入する「静電気ドーピング」と呼ばれる手法を使って、二次元薄膜の原子構造に可逆的な相変化を起こすことができることを実証した。新しいタイプの相変化メモリなどに応用できると考えられている。研究成果は科学誌「Nature」に掲載された。

二テルル化モリブデン(MoTe2)の二次元薄膜の原子配列が、静電気ドーピングによって六方晶型(2H)と単斜晶型(1T')のあいだで可逆的に変化する(出所:バークレー研究所)

今回の研究では、代表的な二次元薄膜材料である二テルル化モリブデン(MoTe2)をイオン液体(DEME-TFSI)でコーティングした。このイオン液体はキャパシタンスが非常に高く、すなわち大きな電荷をためることができる。研究チームによると、イオン液体でコーティングした二次元薄膜に注入できる電子の密度は1cm2あたり100兆~1000兆個であり、バルクの三次元材料に注入できる電子密度に比べて1~2桁高いという。

このデバイスに静電気ドーピングを行うことによって、MoTe2の原子の二次元配列パターンが可逆的に変化することを示した。

静電気ドーピングによって電子が注入されると、MoTe2の原子配列が六方晶型(2H)から単斜晶型(1T')に変化する。電子が取り去られると、原子配列は単斜晶型からもとの六方晶型に戻る。この変化はサンプル全体で同時に起こるという。

ゲート電圧の上げ下げによって二次元薄膜の原子配列を可逆的に変化させられるため、2つの相の違いをデータの0/1に対応させて情報を記憶する不揮発性メモリに応用できると考えられる。

これまでに開発されている相変化材料には、三次元のバルク材料をレーザー加熱などで昇温して相変化を起こすものがあるが、加熱に使用されるエネルギーが大きく、繰り返し加熱することでデバイスの寿命が短くなるなどの問題がある。

化学物質を用いて半導体材料の原子配列を変化させる方法も研究されているが、これも処理が複雑で、制御が難しいため広く実用化されるには至っていない。

静電気で二次元薄膜に相変化を起こすことができれば、相変化を起こすために消費されるエネルギーも少なく、電気的に容易に制御できるため、メモリやスイッチングデバイスとしての応用には適合しそうである。また、六方晶型と単斜晶型では光学的な性質も大きく異なるので、光学デバイスとしてもさまざまな応用がありそうだ。