産総研、撥水性・光透過性・柔軟性を兼ね備えた超低密度の多孔体を開発

産業技術総合研究所(産総研)は9月4日、天然高分子のキトサンを素材とし、撥水性、光透過性、柔軟性を兼ね備えた超低密度の多孔体を開発したと発表した。

同成果は、産総研化学プロセス研究部門階層的構造材料プロセスグループ 竹下覚研究員、依田智研究グループ長らによるもので、8月21日付けの英国科学誌「Nanoscale」オンライン版に掲載された。

キトサンは、エビ、カニ、昆虫などの甲殻の主成分であるキチンを、アルカリ水溶液で処理して得られる天然由来の高分子で、アミノ基(NH2)と水酸基(OH)の2種類の親水性部位が含まれている。

産総研では、断熱性・光透過性・柔軟性を兼ね備えた新規材料として、キトサンを骨格とした超低密度の多孔体「キトサンエアロゲル」の開発に取り組んできた。キトサンエアロゲルは、直径5~10nmの微細なキトサン繊維が絡み合った三次元網目構造をもち、体積の約97%が空隙となる多孔体。シンプルなプロセスで製造することができる一方で、水との親和性が高い部位を分子内に多く含むため湿気に弱いことが課題となっていた。

今回、同研究グループは、キトサンのアミノ基を架橋し、水酸基を疎水化剤で修飾して疎水化することで、キトサンエアロゲルの耐湿性の向上に取り組んだ。

キトサン水溶液に架橋剤を加えてアミノ基同士を架橋させて疎水化し、同時に溶液をゲル化する。このゲルに含まれる水を有機溶媒に交換したのち、水酸基をトリメチルシリル基(Si(CH3)3)で修飾して疎水化する。次いで高圧CO2を用いて溶媒を抽出して乾燥させると撥水エアロゲルが得られる。従来の乾燥プロセスでは溶媒としてアルコールを用い、アルコールとCO2が高圧で均一相を作ることを利用していたが、アルコール/CO2系は高圧でプロトンを生成し、疎水基を分解・除去してしまうため、プロトンを生成しないアセトン/CO2系を用いて、疎水基をそのままに乾燥させる乾燥プロセスを確立した (出所:産総研Webサイト)

この結果、全水酸基の20~30%を疎水基で修飾した場合、約120°の水滴接触角を示す高い疎水性が得られた。なお、従来のキトサンエアロゲルと同等となる96~97%の空隙率のナノ構造と光透過性は維持されていたという。

また、圧縮挙動を調べたところ、疎水基導入量に関わらず、90%程度以上の圧縮変形でも割れずに均一に圧縮されたという。これは、キトサン繊維を疎水化しても、三次元網目構造による機械的強靭さが保持されていることを示している。

従来のキトサンエアロゲルと今回開発した撥水エアロゲルへの水滴滴下の様子(左)と撥水エアロゲルの電子顕微鏡写真(右) (出所:産総研Webサイト)

同研究グループは今後、光透過性断熱材としての実用化を目指し、条件を最適化して透明性をより一層向上させていきたい考えだ。



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