九州大学は、同大大学院工学研究院社会基盤部門の笠間清伸准教授が、海域港湾環境防災共同研究部門の善功企特任教授および中川康之教授、海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所の佐々真志氏、および五洋建設と共同で、高圧脱水固化処理装置を開発し、高含水比の浚渫土砂(しゅんせつどしゃ)をブロック化することに成功したことを発表した。

高圧脱水固化処理装置の全景(出所:ニュースリリース※PDF)

船舶の大型化や安全運航を維持するために、底面をさらって土砂などを取り去る土木工事が行われると、大量の浚渫土砂が発生する。浚渫土砂のリサイクルは、セメントなどの固化材を混合しての安定処理や、比較的低い圧力で脱水・解砕して、ウォーターフロント開発の埋立材として利用されてきた。しかし、リサイクル技術で発現する材料強度は200~500kPa程度で、低質な地盤材料の一次的な強度の改良にしかならなかった。

ほかにも、浚渫土砂に高温焼成を施して建築ブロックとして活用する研究もなされているが、費用と処理時間の面で実用化に課題があるほか、適用対象が小型建築材料のために浚渫土砂の大量処分には結びついていない。

研究グループは、脱水を促進させるための脱水棒を製作するなどして「固化材混合ならびに高圧脱水固化による高強度化メカニズム」の大型化を進め、高さ1m×幅1m×奥行き1m(体積1m3) 程度の浚渫土砂ブロックを製造することに成功した。

製造された浚渫土砂ブロック(出所:ニュースリリース※PDF)

九州は近年、東アジアの窓口として大型コンテナ船が航行できるように湾内や岸壁の大水深化が必要となっており、それに伴う軟弱な土砂が堆積する博多湾や関門海峡に浚渫土砂が大量に発生している状況にある。

研究グループは、同技術を用いることで浚渫土砂を大型海洋ブロック構造体として大量処分することが可能となり、浚渫土砂の減容化や土砂処分場の不要化、航路の大水深化によるコンテナ船の大型化を実現し、ゼロエミッション港湾の構築も促進できるようになると説明している。