東京工科大学は8月22日、バイオ医薬品の血中安定性を向上させ、かつ副作用のリスクが少ないIgG Fc(CH2-CH3)融合技術を開発したと発表した。

同成果は、東京工科大学大学院バイオニクス専攻の佐藤淳教授、志賀有貴 博士課程学生らの研究グループ、国立医薬品食品衛生研究所、産業技術総合研究所、鳥取大学農学部、NPLファーマとの共同によるもの。詳細は米国の学術誌「Molecular Pharmaceutics」に掲載された。

従来型hLF-Fc(左図)とヒンジ欠失型hLF-Fc(右図)(出所:東京工科大学Webサイト)

IgG Fc融合は、バイオ医薬品と抗体の一部であるIgGのFc領域を融合させる、血中安定性を向上させる技術だが、従来は、抗体の一部に「ヒンジ領域」を含むFc領域を有することから、免疫エフェクター機能を介した細胞傷害性IgG Fcによる副作用の可能性が危惧されていた。

今回の研究では、免疫エフェクター機能を示さない「ヒンジ欠失型」CH2-CH3融合技術を開発。これを用いて、自然免疫で機能するヒトラクトフェリンとの融合タンパク質(hLF-Fc)を作製し、従来のIgG Fc融合技術を用いて作製した融合タンパク質とその活性と安定性を比較した。その結果、この融合タンパク質は従来のものと、同等の活性を保持しながら、血中での安定性が向上したとしている。また、従来型のhLF-Fcは免疫エフェクター機能を示したのに対し、ヒンジ欠失型hLF-Fcは示せないことも確認したとする。

なお、今回の成果について研究グループでは、同技術を用いることで、従来の問題点であった副作用を示さない、高い安全性を有したバイオ医薬品の開発への応用が期待されるとコメントしている。