阪大、脳全体を高速・高精細に観察できるイメージング装置を開発

大阪大学(阪大)は6月22日、脳の細胞や神経繊維レベルの微細な構造を識別できる分解能で、マウスや非ヒト霊長類の脳全体を高速に観察できるイメージング装置を開発することに成功したと発表した。

同成果は、大阪大学大学院薬学研究科 橋本均教授、笠井淳司助教、未来戦略機構 勢力薫特任助教らの研究グループによるもので、6月21日付けの米国科学誌「Neuron」に掲載された。

全脳をイメージングする既存の技術として、組織の透明度を高める前処理ののち深部まで一挙に撮影する組織透明化法や、深部まで光が到達しやすい二光子顕微鏡を用いた連続切断法などがある。しかしいずれによっても、神経線維を観察可能な解像度で短時間に観察することはできなかった。

今回、同研究グループが開発したFAST(block-face serial microscopy tomography)という手法では、脳組織の表面付近を、平面分解能1μm以下、深さ方向5μmで撮影したのち、その一部を振動刃のスライサーで切断し、再び撮影することを繰り返して全体を撮影する連続切断法と、針孔写真機の原理を利用し、高速な撮影が可能なスピニングディスク共焦点レーザー顕微鏡を用いている。

装置の各部の構成やセッティングを精査することにより、最終的にマウス脳を2.4時間で撮影することが可能となった。この解像度では従来よりも数十倍高速であり、神経線維を観察することも可能。高精細になったことで、画像のファイルサイズはマウス脳の1色あたり約1TBになるが、FASTではこのような大規模な3次元の画像データを扱えるようになっている。

この速さを活かすことで、多数の脳を撮影し正常なマウスと疾患モデル動物の脳構造を比較することや、コモンマーモセットの全脳およびヒトの脳(死後脳)を高速・高精細にイメージングすることも可能となる。

同研究グループは今回の成果について、今後、精神・神経疾患の治療薬の開発に向けた橋渡し研究などへの応用が期待されると説明している。

FAST装置(左)。脳組織の表面付近を撮影し、振動刃のスライサーで撮影済みの部分を切除する操作を交互に繰り返して、全脳の画像を取得する(中上)。取得したイメージは、画像処理により三次元画像に再構築される。マーモセット脳(中下)、海馬の神経細胞(右上) (出所:阪大Webサイト)

関連キーワード


人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事