東京電力福島第1原発の廃炉作業は長期的な国家的課題で、新技術の研究開発や人材の確保、育成が極めて重要とされている。こうした中で文部科学省、科学技術振興機構(JST)と東京工業大学など9機関が共催して次世代の作業を担う研究者、技術者の育成を目的とした研究発表会「次世代イニシアティブ廃炉技術カンファレンス」が7日、東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)で開かれた。

写真1 学生による研究発表風景

写真2 ポスターセッションで研究成果を発表、質問する学生ら

写真3 特別講演する小川徹 氏

共催したのは文科省、JST、東工大のほか、東京大学、東北大学、福島大学、福井大学、福島工業高等専門学校、地盤工学会の合わせて9機関。基調講演、特別講演と学生の研究発表、ポスターセッションなどで構成され、200人以上の研究者、学生、企業関係者らが参加した。

学生の研究発表は、「燃料デブリ処理、放射性廃棄物処分」「遠隔技術」「原子炉の廃止措置(廃炉)」など7つの研究分野に分かれ、遠隔操作のロボット技術やデブリ(溶解核燃料)の処分方法などについて、主催機関以外の大学や高等専門学校生も含めた学生が約60件の発表を行った。「廃炉創造ロボコン用ロボット製作について」(福島工業高等専門学校)「回収作業中に落下した燃料デブリの堆積角度と臨界性に関する検討」(東京都市大学)「沸騰水型軽水炉過酷事故時の炉心構造物破損形態の解明」(東京工業大学)など、どの発表も福島第1原発事故の過酷な実態を受けての研究で、各会場では日本原子力研究開発機構(JAEA)や企業の研究者らも学生の発表を真剣に聞いていた。

ポスターセッションでは30件以上の発表があり、学生は互いの発表内容について熱心に質問し合っていた。夕方からは最後の企画としてJAEA廃炉国際共同研究センターの小川徹(おがわ とおる)センター長による特別講演が行われた。

「廃炉のための基礎基盤研究課題」と題したこの講演の中で小川センター長は「事故炉の状況はまだ不明な点も多く、廃炉作業は長期にわたる困難な過程になる。さまざまな課題に対応するために基礎基盤研究と(廃炉作業)プロジェクトとの効果的な連携が求められる。リスク管理を行いながら(研究開発による)先端的なツールを廃炉の現場に届ける必要がある」などと述べた。

東京電力関係者によると、福島第1原発2号機では、東電が1月下旬の事前調査を経て2月に溶け落ちたデブリの実態把握を目指す本格的調査を開始した。原子炉格納容器内にカメラや線量計を搭載したサソリ型の自走式ロボットを投入して炉内の空間放射線量は毎時210シーベルトであることなどを明らかにしたが、ロボットは圧力容器の下までたどり着けなかった。東電は2021年中のデブリ取り出し開始を目標にしているが、技術的課題は多く廃炉作業が完了するまでにあとどれだけの年月がかかるかは見通せない状況になっている。そうした中で廃炉作業を担う次世代の人材育成は不可欠とされている。

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