ペンシルバニア州立大学の研究チームは、二次元材料「二テルル化タングステン(WTe2)」を単層かつ大面積・高品質で合成することに成功した。WTe2はトポロジカルな電気特性をもつ二次元材料として注目されているが、これまで多層の状態でしか合成できていなかった。二次元のWTe2で現れるトポロジカルな性質は、量子コンピュータへの応用などが期待されている。研究論文は二次元材料専門誌「2-D Materials」に掲載された。

今回の研究で使われた二テルル化タングステン(WTe2)のイメージ図。グラフェンの層間に挟みこまれている(出所:ペンシルバニア州立大学)

トポロジカル絶縁体は、三次元の材料表面または二次元の材料端部だけに電気が流れ、内部には電気が流れないという特殊な電子状態である。このような物質のトポロジカルな性質を利用することで、周囲の環境ノイズの影響を受けにくく安定した量子計算を行うことができる「トポロジカル量子コンピュータ」が実現できると考えられている。単層WTe2は、こうした用途にも応用可能な二次元のトポロジカル材料であると予想されており、その物性解明に注目が集まっている。

単層WTe2自体は、バルクのWTe2を物理的に剥離することによって簡単に得ることができる。しかし、空気に触れると急激に劣化してしまう性質があるため、剥離法で得られたサンプルは材料の電気特性などを調べるのには使えない。

材料特性を詳細に調べるためには、真空中で成膜する化学的気相成長法(CVD)が適しているが、これまでは単層WTe2が何層も積層した多層状態でしか合成できていなかった。多層WTe2の観察からは、非飽和の巨大磁気抵抗、圧力で誘発される超伝導状態、電子の弱反局在効果といったさまざまな性質が報告されているが、これまでのところ、単層の状態での電気的データは得られていない。

研究チームは今回、タングステン基板を置いた高温の真空チャンバ内にテルル含有ガスを流し込んで成膜するCVDの手法を用いて、温度条件などを適切に調整することで、高品質の単層WTe2を大面積で合成することに成功した。また、単層WTe2をグラフェンの層間に挟みこむことで、サンプルが空気に触れて壊れる前にその物性を調べることができるようにした。

合成された単層WTe2は、原子3個分の厚さをもつ。3個の原子の配置によって材料の性質が変化するが、このうちの1つのパターンでトポロジカルな電気特性が発現すると予想されている。研究チームは、合成に成功した単層WTe2を用いて、実際にトポロジカルな性質を確認することが次の課題であるとしている。