北海道大学(北大)と日立製作所(日立)は5月20日、治療室内コーンビームCTと陽子線強度変調照射法IMPT(Intensity Modulated Proton Therapy)という2つの新たな高精度陽子線治療の臨床適用を開始したと発表した。
コーンビームCTシステムは、回転ガントリー搭載型で、治療直前に患者の体内の状態を三次元で正確に撮像することが可能。従来に比べ陽子線の照射位置精度を高めることができ、動体追跡技術を適用しない部位の治療においても高精度の位置決めを行なうことが可能となる。2015年10月に臨床適用が開始となっており、現在までに、治療患者延べ20人に対してコーンビームCTを用いた高精度治療を行なっている。
一方、強度変調陽子線治療IMPTは、スポットスキャニング陽子線治療の一種で、複数方向から照射する陽子線の強度分布を自在にコントロールすることにより、病巣の形が複雑な場合や、正常組織が隣接しているような場合にも線量を病巣に集中し、正常組織への線量を低減できる照射法。
今回、陽子線スキャニングビームを用いた強度変調照射により、呼吸等で動く腫瘍に対しても正常組織を守ることが可能なIMPTを実現した。これにより、腫瘍と正常組織が複雑に隣り合う場合に、腫瘍への線量集中性を高めつつ正常組織への線量を低減することができる。また、飛程誤差やセットアップ誤差に対しても強い線量分布を作る技術を組み合わせ、線量集中性を高く保ちながら、動きにも強い分布形成を実現した。
IMPTは、2015年8月に本格的臨床適用が開始となり、現在までに前立腺、肝臓、頭頸部、小児治療に対して適用されているという。今後は、さらに適応部位を拡大していく予定。
