日本人の勤務時間が増えている。社会生活基本調査によると、一日10時間以上働く男性のフルタイム雇用者は、1970年代には2割以下だった。だが、2011年には43.7%へと増加している。
長時間労働がまん延している原因の一つとして、残業が挙げられる。「まじめで勤勉」として広く世界に知られる日本人だが、その一方で過重労働や過労死などが社会問題となっているのも事実。残業は必ずしも美徳とは呼べないと言っていいだろう。
それでは、日本とは異なる働き方を見て育った外国人には、残業が日常的に行われているこの「日本式スタイル」はどのように映るのだろうか。日本在住の外国人20名に「日本企業の残業」について聞いてみたので、気になった意見を紹介しよう。
Q. 母国の仕事スタイルと比較して、残業が多い日本の企業をどう思いますか?
■残業制度は大変
・「日本の残業習慣は本当によくないです。体を崩したり、うつ病になったりする人をたくさん見てきました。改善は必須です」(シンガポール/20代後半/男性)
・「日本の企業は大変だと思います。一般的に母国ではあまり残業が遅くなるところはありません」(トルコ/40代前半/男性)
・「大変です。仕事は大切ですが、自分の時間とか家族も大切なので、もっと家族との時間を与えてもらいたいと思います」(ロシア/20代後半/男性)
・「残業が良いこととは言えないです。定められている時間内でちゃんと仕事を終えることがベストです」(ベトナム/30代前半/女性)
・「とても大変と思います。体がきついですし、家庭関係にも良くないと思います」(台湾/40代後半/女性)
・「嫌いです。プライベート時間が少なくなることで、リフレッシュ時間も取れない」(マレーシア/30代中盤/女性)
・「あり得ないと思います。特に週末出勤はあり得ないです。残業代がしっかりもらえないから余計に」(カナダ/30代前半/女性)
・「母国にも全く残業がないと言えませんが、日本ほどではないです。日本は残業の問題を解決すべきだと確信しています」(ウクライナ/20代中盤/女性)
■理解に苦しむ
・「バカバカしいと思う」(インドネシア/20代後半/男性)
・「おかしいと思います」(イタリア/30代前半/男性)
■業務をもっと効率的にできるのでは
・「もっと効率よく仕事をこなすべき」(オーストラリア/30代後半/男性)
・「仕事に時間がかかりすぎだと思います」(香港/20代後半/女性)
■母国ではこうしています
・「母国には残業があまりないので、ストレスはたまりやすくありません」(スペイン/30代前半/男性)
・「母国も職業によって残業が多く発生します。その代わりにお昼休みは平均2時間いただいています。残業がなくても」(ブラジル/40代前半/女性)
・「韓国もとても残業が多いほうです。韓国はもう少し柔軟に、自由に休憩がとれる環境だと思います」(韓国/30代前半/女性)
・「日本は残業が多いです。母国にはあっても、ちゃんと残業代がついています。日本の仕事スタイルはアメリカがモデルだと思います。向こうも残業が多いです」(ポーランド/30代前半/女性)
■総評
結果は、「残業が常態化している日本は大変だ」との見解を持つ回答者が約半数にのぼるというものだった。
残業の弊害として当該者の家庭への影響を懸念する声も多く、中には「理解不能です。自分の家と家族にもしっかり時間をかけるのがフィリピン流です。日本は家庭をほったらかしにし過ぎて少子化になったのでは? 」(フィリピン/30代中盤/女性)との意見も見られたほど。「仕事同様、もしくはそれ以上に家族を大切にする」という彼(女)らの考え方がひしひしと伝わってきた。
内閣府は「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」において、「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活」を私たちが送れることを目標として掲げている。ただ、その実現がまだ遠いことは、日本人だけではなく外国人も理解しているようだ。
※写真と本文は関係ありません
調査時期: 2016年2月15日~2016年3月15日
調査対象: 日本在住の外国人
調査数: 20名
調査方法: インターネット応募式アンケート