茨城県警察察では幹部職員が「イクボス宣言書」に署名。仕事と家庭の両立を実現するための施策は?

茨城県警察はこのほど、所轄署の署長や本部の刑事部長ら78名の幹部職員全員が「イクボス宣言書」に署名したと発表した。同県警察は、いつ起こるかわからない事件・事故の対応に追われるなか、どのようにワークライフバランスを実現しようと考えているのか。担当者に聞いた。

幹部職員の意識改革が子育てしやすい職場作りにつながる

「イクボス宣言書」は、ワークライフバランスが実現できる職場作りを目的として、同県警察が作成したもの。宣言書には、「職員が仕事と家庭を両立できる働きやすい職場環境を作り…(中略)…自らも仕事と私生活を充実させる『イクボス』となります」と書かれている。

なぜこのような取り組みを実施したのか。この点について警務部の担当者は、「この年代の職員には、これまで仕事一筋に打ち込んできた人が多い」と指摘。ワークライフバランスを推進するためには、職員が休暇を取りやすいよう、幹部職員の意識改革を徹底する必要があると考えたという。宣言書の署名にあたっては、幹部職員全員が、イクボスのアドバイザーによる講義を受講。ただ署名するだけではなく、イクボスについての資料を自分の机に掲示して、意識づけるところまで徹底している。

出産前後の休暇、男性の取得率100%を目指す

それでは子育てしやすい職場作りに関して、具体的にはどのような目標を定めているのか。警務部担当者によれば、最も力を入れているのが男性職員による「配偶者出産休暇」と「育児参加休暇」の100%取得だ。「配偶者出産休暇」とは、配偶者の出産前後に3日間の範囲で休暇を取得できるというもので、現在でも、2015年1月1日~11月5日までに配偶者が出産した男性職員の97.8%が取得している。

一方、配偶者の出産前後に育児を目的として5日間の範囲で取得できる「育児参加休暇」の取得率については、同期間で49.6%にとどまっている。担当者は、「まだまだ制度の周知が不十分。子どもがうまれる予定の職員を把握して、積極的に制度を紹介していきたい」と話した。

同県警察ではこのほかにも、中学校就学前の子どもを持つ職員については、深夜・時間外勤務を免除できる制度を平成26年4月、独自に創設している(県職員に適用される条例の定めでは、子どもの年齢上限が、小学校就学前までとなっている)。出産時だけでなく、その後の子育てにおいても頼りになる制度が充実しつつあるようだ。

メリハリのある働き方だからこそ、仕事に全力投球できる

しかし、事件・事故の対応に追われる警察という組織で、ワークライフバランスを実現していくことは難しいのではないだろうか。この問いに関して担当者は、「緊急事案にしっかり対応するために、逆に必要な働き方だ」と答えた。「何もないときには早く帰宅し、休暇も取得してもらう。ムダを省き、業務の効率化を進めることで、仕事に全力投球できる」という。

さらに、育児だけでなく、病気やけが、家族の介護など、多くの職員がさまざまなライフイベントに直面することを想定しているという同県警察。職員が1人欠けても仕事が回るような業務力をつけるという目的からも、今回の取り組みは有効とのことだ。県民の安心・安全を守るという職務を全うしてもらうためにも、これらの取り組みが推進されていくことを望みたい。