半導体調査会社の米IC Insightsは12月2日(米国時間)、2015年の半導体産業におけるIDMおよびファブレスの売上高トップ10予測を発表した。売上高の数値は、2015年第3四半期までの実績値に第4四半期の生産・販売計画にもとづく予測値を合計した速報値である。2016年春発表予定の確定値とは若干誤差が出るが、ランキング順位はほとんど変動しない。

IDMの成長率がファウンドリを上回る異例の年に

ファブレスの成長率は常にIDMの成長率を抜いており、IDMの成長率がファブレスの成長率を抜いたことは過去に一度しかない。2010年に、ファブレスの成長率が29%に対して、IDMの成長率は35%成長したのは例外的であった(図1)。この年はメモリの当たり年で、DRAMおよびNAND型フラッシュメモリの成長率が、それぞれ75%、44%であったため、メモリのIDMが急成長を遂げたからである。

図1 世界半導体市場におけるIDMおよびファブレスの前年比成長率(%)の変遷(1999年~2014年)。そら色はファブレス、赤色はIDMを示す

2015年、ふたたびIDMの成長率がファブレスの成長率を抜きそうだ。これを詳しく見ていこう。世界半導体市場におけるIDM、ファブレスごとの2015年売上高ランキングトップ10をそれぞれ表1、表2に示す。現在、世界半導体業界は再編で激動しているが、すでに公表されている買収や合併は、それが法律上いつ完了するかは問わず、2014年、2015年とも一体化した売り上げとして集計してある。このほうが、今後の半導体市場勢力を知る上で便利だろう。

IDMはSamsung・SK Hynix・ソニーだけプラス成長

2015年のIDMトップ10の売上高の規模は、2014年と同じで、成長率はゼロとなるだろうとする(表1)。一方、ファブレスの売上高は、それよりさらに悪く、5%のマイナス成長としている(表2)。IDMトップ10のなかでは、Samsung Electronics、SK Hynix, ソニーのアジア勢3社だけがプラス成長している。この表はドル基準により作成されているが、最近はドル高が続いているため韓国ウォンベースではSamsngおよびSK Hynixの成長率はそれぞれ18%、12%と上昇する。DRAMの価格が長期にわたり高止まりだった影響が大きい。ソニーに至っては、日本円ベースでは27%とトップ10社中、最高の成長率だ。これは、もちろん破竹の勢いのCMOSイメージセンサの寄与による。

表1 2015年世界半導体市場におけるIDM売上高トップ10。左より2015年順(予測)、企業名、本社所在国、2014年の集積回路売上高、光学素子・センサ・ディスクリ―ト売上高、全半導体売上高(前2項目の合計)、2015年のIC売上高、光学素子・センサ・ディスクリ―ト売上高、全半導体売上高、全半導体売上高の2015/2014年比(%)。すでに発表されている企業買収については、その買収完了時期によらず、2014年、2015年ともに2社の合計額で表示した。Apple/TSMCの意味については本文参照。イメージセンサは、統計上、集積度にかかわらず光学素子として扱われている

表2 2015年世界半導体市場におけるファブレス売上高トップ10(予測)

ファブレスはAppleが驚異の100%超の成長

ファブレスが今年マイナス成長になった最大の要因は、ファブレストップ企業のQualcomm/CSRの急激な業績悪化(前年比20%減)である。Samsungが、自社スマートフォンのアプリケーションプロセッサとしてQualcommからの調達を減らし自社開発のEXYNOSに切り替えた影響が大きい。

表2で、ファウンドリ専業である台湾TSMCからファブレス/システムハウスであるAppleへのアプリケーションプロセッサの売り上げは"Apple/TSMC"と記載している。AppleはSamsungにも製造委託しているが、その分もこの売り上げに含んで集計しているものの、同時にIDM/ファウンドリ兼業のSansungの売り上げにもダブルカウントされている。なお、Appleは、ソニーからCMOSイメージセンサを調達しているが、半導体チップとしては調達していないため、集計には含まれていない。他社のレンズやオートフォーカスや手ぶれ防止などの光学機能をすべてモジュール化してから光学部品として納入されている模様である。それにしても、ファブレス7位に浮上してきたAppleは、アプリケーションプロセッサだけで前年比111%も成長し、今年マイナス成長のファブレス界で驚異のプラス成長である点は注目される。中国の新興ファブレスSpreadtrum(前年比40%成長)やHiSilicon(同19%)の急成長も注目される。

一方、MPUでIntelのライバルであるAMDは、PC業界の不振で、ファブレストップ10の中で最大の落ち込みとなるマイナス28%となっており、企業としての凋落をあらわにしている 。

Avago/Broadcom連合(2016年にAvagoがBroadcommを買収し、新社名がBroadcomになる見込み)が落ち目のトップQualcomm/CSR連合に肉薄し、3位以下を大きく引き離して2位に浮上する点も注目されよう。