半導体市場調査企業の米IC Insightsが8月5日(米国時間)に2015年上半期(1~6月期)の世界半導体市場売上高ランキング・トップ20を発表した(図1)。このランキングには、各社の直近の第2四半期(4~6月期)の売上高も記載されている。
同社のランキングは、他社のランキングとは異なり、ファウンドリを含んでいる。そのため、市場売上の総額には、ファウンドリの売り上げと製造委託企業の売り上げが2重にカウントされてしまっているが、同社は、成長するファウンドリの規模を明示するため、あえてファウンドリを含めたランキングを作成している。この表で、ファウンドリには印が付けられており、3位に台湾TSMC、17位に米国GLOBALFOUNDRIES(昨年は20位)、 19位に台湾UMC(昨年は21位)が挙がっている。
1位Intel、2位Samsung Electronics、3位TSMCの順位はこの数年変化していない。半期で130億ドル超を売り上げるのはこの3社のみで、90億ドルに達しない4位以下を大きく引き離している。Samsungは、直近の第2四半期の対前期比成長率がランキング・トップ20社中、最高の10%に達し、トップのIntelとの差を縮めた。2014年(通年)には、 Intelの売上高はSamsungの1.36倍あったが、2015年上半期には1.2倍に縮まった。直近の第2四半期には16%増まで縮まっている。しかし、Samsungの売り上げの中心であるDRAMの価格が下がり気味のため、Intelとの差をさらに縮めるのは難しそうだとIC Insightsは見ている。
Samsungと対象的に、第2四半期の対第1四半期成長率がマイナス13%と最悪なのが、Qualcommだ。同業の台湾MediaTekや中国新興企業の猛攻で業績不振に陥っている。今年大幅なリストラを行うのは必至だろう。2015年通年では売り上げが前年比マイナス20%に達しそうだとIC Insightsは見ている。
今回のランキングではトップ20からNVIDIAとAMDが消え、代わりにシャープ(昨年23位)とUMC(昨年21位)が入った。AMDの売り上げは大幅に下落しており、直近の2015年第2四半期の売り上げは10億ドルに足らず、このようなことは過去12年間ではじめてである。非PCビジネスへの転換がうまくいっていないようだ。
日本企業は、8位に東芝、15位にルネサス エレクトロニクス(昨年の11位から後退)16位にソニー(昨年は17位)、20位にシャープが滑り込んだ。ルネサスは、発足当時は世界3位の巨大企業誕生と騒がれたが、毎年ランクを落とし、トップ10からも脱落し低下を続けており、トップ10に残る日本企業は東芝のみとなっている。
ソニーは裏面照射CMOSイメージセンサ、シャープはそのカメラモジュールといずれもApple向けの大量受注による寄与が大きかったようだ。シャープの主力工場である福山工場は一部閉鎖・売却の方向で本社は検討しているようだが、今年上半期の売り上げは昨年通期の6割を超えて、その伸びが注目されている。
欧州企業は、2015年第2四半期に限れば、独Infineon Technologiesの売り上げが仏伊STMicroelectronicsの売り上げをわずかとはいえ超えた。Infineonは念願の欧州最大の半導体メーカーに躍り出たという点で今後が注目される。
半導体業界にM&Aの津波が押し寄せ(既報記事参照)、12位Avago Technologiesが格上の9位Broadcomを買収し、14位NXPが18位Freescaleを買収することが決まっている。図2はこれらを考慮した仮想ランキング表である。Avago/Broadcom新会社(=新生Broadcom)は、図2に示すように7位に躍り出る。NXP/Freescale(=新生NXP)はトップ10入りを果たすとともに、車載半導体分野でルネサスを抜き世界トップに躍り出る。この結果、東芝は今後9位へ後退してしまいそうだ。
2015年上半期の売上額は、多くの企業で2014年同期と比べて期待通りには伸びていないことから、IC Insightsは今年の世界半導体市場売上高(総額)を、従来予測の前年比5%増から2%増に下方変更した。