富士通研究所は3月10日、居住空間や人間に着けたさまざまなセンサーから、対象者の隠れた運動機能異常を早期発見する技術を開発したと発表した。

これまで、センサーから得られる膨大な量のデータから、機能異常など医療従事者にとって有意なデータを抽出すること、また個人ごとの状態に応じた判定は困難とされていた。

同社が開発した技術では、環境センサー、体の動作センサー、バイタルセンサーを用いて、起立や歩行など日常の動作(生体イベント)を継続的に抽出し、個人や症例ごとに特長を数値化する。また、個人に合わせて歩行速度などの基準値を設定することができるのでより正確な生体イベントの検出が可能となり、行動や健康状態に応じた特長の変化を定量的に比較することが可能となる。

さらに、大量に抽出される歩行特長などの生体イベント情報と、扉の開閉など居住環境の変化の情報から関係の深いパターンを抽出する技術も開発。各患者の症状に関係する生体イベントと発生条件に関わる環境イベントの関係性を繰り返し抽出することで、これまで医療従事者が気付かなかった新たな運動機能不全の事象を発見することが可能となる。例えば、ベッドから起きた後に歩行に異常がある場合、関節のこわばりや起床後の血圧異常が疑われるという。

同社は2013年7月からアイルランドの研究機関であるCASALA、INSIGHT@UCDと共同で、スマートハウスに居住する高齢者などを対象に、センサーから収集したデータを可視化・分析する研究を実施している。今後、同技術の2017年度中の実用化を目指し、アイルランドでの研究を通じて、さまざまな症例やスマートハウス外での適用・検証を進めるとしている。

同技術の活用イメージ

日常生活におけるセンシングデータの収集