東邦大学はこのほど、2011年3月の東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波によって、大規模な撹乱を受けた仙台湾沿岸の海岸林において、「津波によって生み出された多様性」があると発表した。

これは同大学理学部生命環境科学科を2014年3月に卒業した遠座なつみ氏および同 西廣淳 准教授らの論文で報告されたもので、2014年11月発行の日本生態学会の研究誌「保全生態学研究」に掲載された。

遠座氏、西廣准教授らは、2013年7月および10月に津波による撹乱を受けた海岸林の管理方針の検討に資することを目的として、津波の影響を受けた海岸林の植生調査を実施した。その結果、調査対象となった地域では、津波により「倒木した場所」と倒木せずに「残存した場所」が50m程度の幅で交互に成立しており、「倒木した場所」では草原の植物が、「残存した場所」では撹乱以前と共通した植物が生育していた。また、津波以前より存在した湿地はほとんどダメージを受けていなかった。

このように、海岸林として環境が均質であった場所が、撹乱によって環境の異なる場ができたことで、全体として多様な種の育成が可能となったことがわかった。さらに、海岸林を構成していたクロマツが津波により倒れたことで生じた窪地が、イヌセンブリなど絶滅危惧種の生育場所になっていた。

津波により倒木した場所。両側に残存した林が残っている。

撹乱跡地に生育するイヌセンブリ

現在、このような海岸林では、2-3m程度の盛土をし、新たにクロマツを植林する事業が進められている。同研究の結果は、生物多様性保全の観点からは植林事業が問題が大きいことを示している。