横浜市立大学は9月10日、軟骨の再生メカニズムを発見したと発表した。

同研究成果は同大学大学院医学研究科臓器再生医学 武部貴則 准教授、同 谷口秀樹 教授、神奈川県立こども医療センター形成外科 小林眞司 部長らの研究グループによるもの。9月9日付(現地時間)の米化学会誌「The Journal of Clinical Investigation」に掲載された。

成体軟骨組織は血管や神経を欠く単純な臓器のため、肝臓などの臓器と比べて再生医療の早期実現が期待されていた。これまでの研究では、未熟な細胞に成長因子などを組み合わせて培養系に添加することで、軟骨の再生に成功していたが、この方法では成熟する効率が高いといえず、より効率の高い新たな軟骨再生方法が望まれていた。

同研究では、軟骨発生・再生プロセスを観察した結果、初期段階(軟骨前駆細胞の分化段階)において血管が一時的に進入し、その直後に細胞が活発に増殖して急激にサイズが大きくなることを発見。一度形成された血管は、徐々に退行し、最終的に血管を欠く成熟した軟骨が形成されることがわかったという。この観察結果から、軟骨形成の初期段階において、軟骨前駆細胞において一時的に血管が存在することで、増殖や分化が促進されると推測された。

軟骨形成初期過程において血管化が生じることを発見

この現象を培養系で再現すべく、軟骨前駆細胞とへその緒より分離した血管内皮細胞との共培養を行ったところ、約48時間で軟骨前駆細胞の固まりに血管が入り込んだ、直径約3mmの立体構造が自律的に形成されたという。

また、この立体構造はそのまま移植実験に利用することができ、生体内へ移植すると一時的な血管化が再現されることが判明した。さらに、この三次元組織は一般的な凍結法によって保存し、移植に利用することが可能であることも示されているという。

同研究チームは「一時的な血管形成プロセスを再現化するという方法によって軟骨再生が可能であることを示した今回の研究成果は、立体組織の形成過程の初期段階において、さまざまな細胞との相互作用を経ることが重要であることを示唆している」とコメント。今回開発した三次元培養法は、保存が可能であることや、今まで必要であった足場材料を用いる必要がないことから、安全性やコストの面で有益な軟骨再生技術になると考えられるという。

一時的な血管化を再現する独自のヒト軟骨培養法を開発