エボラ出血熱の流行はいまだ収まることなく、深刻な事態を脱していないが、日本では、海外渡航歴がない学生3人がデング熱に感染したことが話題になっている。そこで、デング熱に関する基礎知識をまとめてみた。
デング熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるデングウイルスの感染症で、ヒト(患者)-蚊-ヒトという経路で感染し、ヒトからヒトには感染しない。日本にはネッタイシマカが常在していないため、日本ではヒトスジシマカを介して感染する可能性がある。
ヒトスジシマカは、日中・屋外で活動し、活動範囲は50~100メートル程度で、国内の活動時期は概ね5月中旬~10月下旬頃までだという。
感染してから2~15日(通常2~7日)症状のない期間があった後、38~40℃の発熱、激しい頭痛、関節炎、筋肉痛、発疹といった症状が見られる。症状には、非致死性の熱性疾患であるデング熱と、重症型のデング熱の2種類がある。
大半の患者がかかるデング熱は、感染3~7日後、突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多い。発症後、3~4日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へ広がり、これらの症状は1週間程度で消失する。
一方、一部の患者において、発熱が終わり平熱に戻りかけた時、血漿漏出に伴うショックと出血傾向を主な症状とするデング出血熱が出現することがある。初発症状が出現してから3~7日後に起こり、同時に体温低下のほか、激しい腹痛、連続する嘔吐、呼吸促迫、歯肉出血、倦怠感、不穏、吐血といった症状が見られ、適切な治療が行われないと死亡することがある。
デング熱を起こすウイルスには4種類の血清型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)がある。ある血清型のウイルスに感染して回復すると、その血清型への免疫がついて一生続く。しかし、回復後、他の血清型のウイルスに感染すると重症型のデング熱になるリスクが増す。
デング熱には特異的な治療法はなく、現在のところ、ワクチンもない。唯一の予防策は蚊に刺されないことだ。日中にヤブや木陰といった蚊が多い場所に行く場合は長袖・長ズボンを着用するとよいだろう。