欧州司法裁判所は5月13日、米Googleに対し、検索結果ページに表示される個人情報を含むページの削除要求に応じるべきとする判定を下した。これは「忘れられる権利」の考えを支持するものとなり、すでにGoogleの下には政治家などから削除要請が殺到しているようだ。
この訴訟は、財政難から自分の資産をオークションにかけたスペイン人がGoogleに対して起こしたもの。オークションから10年以上が経過しても、自分の名前を検索するとオークションを報じたニュースコンテンツへのリンクが表示されることから、名誉毀損に当たるとしてGoogleに削除要求を申し出た。
だが、現行法の下ではGoogleはこれに応じる法的義務を明示的に負わない。そこでスペイン情報保護局への提訴に至った。
スペイン情報保護局は原告の主張を認めたが、Googleがこれを不服として上訴、そして今回、欧州連合(EU)の最高裁判所に当たる欧州司法裁判所に審判を求めた。
この日、同裁判所は原告の主張を支持し、Googleに対し該当するリンクの削除を命じた。判決に至った背景として、Googleなどの検索エンジン事業者が行うデータの収集、組織化、サーバ上での保存、開示などのプロセスをたどりながら、Googleのような検索エンジンは外部が公開するWebページへのリンクに責任を持つとの判断を示している。
EUでは2012年1月に「忘れられる権利(right to be forgotten)」を含む新しいデータ保護法案が出されている。今回の裁定は、これを支持するものとなる。一方で、忘れられる権利については検閲につながる可能性もあると注意を喚起する権利団体もある。
今回の欧州司法裁判所の判断について、Wikipediaの創始者Jimmy Wales氏は、「自分が知っているなかで最も大規模なインターネット検閲規定だ」とBBCに語っている。Wales氏は、情報を公開したニュースなどコンテンツ側に主要な責任があり、Googleは単に公開されている情報の発見を支援しているだけ、と続けている。
Reutersが5月14日に報じたところによると、この裁定が下った後、Googleにはたくさんのリンク削除要請が届いているという。Google会長のEric Schmidt氏は年次株主総会でこの件に触れ、「忘れられる権利と知る権利の衝突」とし、Googleはバランスをとることが大切と考えているとコメントしたことが報じられている。