なぜ肥満になると糖尿病を発症しやすいのか? - 金沢大が仕組みの一部を解明

金沢大学は1月30日、肥満者では肝臓が産生する機能未知の分泌タンパク質(ホルモン)の「ヘパトカイン」の1種「LECT2(Leukocyte derived chemotaxin2)」が過剰に産生され、血液に多く分泌されていることを見出し、マウスの実験ではカロリーの高い高脂肪の食事をわずか1週間食べさせるだけで、肝臓でのLECT2産生が上昇することが確認され、さらに過剰に産生されたLECT2は筋肉において「インスリン抵抗性」を誘導し、血糖値を上昇させることがわかったと発表した。

成果は、金沢大 医薬保健研究域 医学系恒常性制御学の御簾博文 特任助教、同・篁俊成 准教授、金子周一教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間1月29日付けで米国糖尿病学会誌「Diabetes」オンライン版に掲載された。

日本においても世界の先進国と同じように、肥満者の数は増加している。肥満症や2型糖尿病患者の肝臓や骨格筋では、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効かなくなるというインスリン抵抗性が起こるために、糖尿病を初め、メタボリックシンドローム、動脈硬化、がんになりやすくなり健康を害することが知られている。しかし、肥満がインスリン抵抗性を起こすメカニズムは完全には解明されていなかった。

研究チームはこれまで、肝臓が生体内最大の活性物質の産生工場であることに注目し、肝臓由来の分泌タンパクのヘパトカインがさまざまな疾患の原因になっているのではないかと考察した上で研究を進めてきている(画像1)。そして今回、肥満に関連した肝臓由来ホルモンを探索し、新たな発見をしたというわけだ。

画像1。肝臓由来ホルモンのヘパトカインが生活習慣病を作る

新たに発見されたのは以下の4点だ。まず1点目は、人間ドック受診者において、肥満が強いほどLECT2の血中濃度が高まっていること(画像2)。2点目は、マウスに高カロリーな高脂肪食を食べさせたところ、1週間後から血中LECT2濃度が上昇することがわかったことだ(画像3)。3点目は、LECT2を先天的に欠損したマウスでは、糖およびインスリン負荷時に血糖値が低く、骨格筋でのインスリンシグナルがよく伝わっていたこと(画像4~6)。4点目は、試験管内で培養した骨格筋細胞を、L ECT2タンパクと培養すると、インスリンのシグナル伝達が障害され、インスリン抵抗性が誘導されるということである。

なお、LECT2は、ヒトの免疫細胞である好中球を活性化する因子として同定された。主に肝臓で作られる分泌タンパク質だ。これまでは、慢性関節リウマチなどの自己免疫性疾患や肝臓がん発症と関連することが報告されていたが、肥満や代謝性疾患との関連は不明であった。

画像2(左):肥満の程度(BMI)と血中LECT2濃度の正相関。人間ドック受診者の血中LECT2濃度が、ELISA法で測定された。その結果、BMIが強いほどLECT2濃度が高まることがわかった。画像3(右):高脂肪食を食べさせたマウスの血中LECT2濃度。マウスに高カロリーな高脂肪食(HFD:High fat diet)を食べさせたところ、摂食1週間後から血中LECT2濃度が上昇した。普通食(RD:Regular diet)を食べたマウスでは血中LECT2濃度は不変であった

LECT2欠損マウスの耐糖能。LECT2を先天的に欠損したマウスを作成し、糖の処理能力を評価した。LECT2欠損マウスでは糖およびインスリン負荷時に血糖は低値であり、骨格筋のインスリンシグナルが高まっていた。画像4(左):糖負荷試験。画像5(中):インスリン負荷試験。画像6(右):筋でのインスリンシグナル

以上の結果から、肥満者では高脂肪食の摂取に応答して肝臓がLECT2を過剰に分泌すること、過剰に産生されたLECT2が骨格筋でインスリン抵抗性を誘導することで、インスリン抵抗性の結果、肥満者は糖尿病を代表とする各種疾患に罹患しやすくなると考えられるという(画像7)。

画像7。LECT2は肥満とインスリン抵抗性をつなぐヘパトカイン

肝臓でのLECT2の産生を落とす薬剤や、筋肉でのLECT2の作用を落とす薬剤を見つけることが、新しい糖尿病治療薬の開発につながると考えられるとしている。

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