国民生活センターは2013年12月、豆乳、調製豆乳、豆乳飲料やその他の大豆を主な原材料とする飲料を含めた「豆乳等」を摂取することで、皮膚や粘膜のかゆみ、赤み、腫れ、じんましん、呼吸困難といったアレルギー症状を発症したという相談が増えていることを受け注意を呼びかけた。

大豆はOKなのに、豆乳はダメなワケ

そもそも食物アレルギーは、食物を摂取した時に、身体が食物に含まれるタンパクを異物として認識し、自分の身体を防御するために過剰な反応を起こすために生じる。そして、それは発症の機構から「クラス1食物アレルギー」と「クラス2食物アレルギー」に分類されている。

  • クラス1食物アレルギーとクラス2食物アレルギーの違い

    クラス1食物アレルギーとクラス2食物アレルギーの違い

たとえば、「大豆はOKだが、豆乳を飲んだら突然喉が痒くなった」といったパターンでは、クラス2食物アレルギーが関係している可能性がある。

まず、クラス1食物アレルギーとは、いわゆる通常の食物アレルギーのこと。食物が消化管から吸収されてアレルギーを起こすもので、代表的な食物としては卵や牛乳、小麦、そば、大豆などがある。

一方のクラス2食物アレルギーは、花粉中のアレルゲンタンパクやラテックスタンパクの吸入、接触によりアレルギーが発症した後、それらと類似したタンパクを含む果実や野菜などを経口摂取した時に口腔粘膜で発症するもの(交差反応*)。「口腔アレルギー症候群」とも呼ばれている。

*交差反応(性):交差抗原性に起因して症状が誘発されること

なぜ突然「豆乳」でアレルギー症状が出る?

大豆は、日本型の食生活に欠かせない食品である一方、日本人にみられるアレルギー食品の1つとも言われている。

大豆アレルギーは、大豆を原材料とした食品を食べたことにより発症する症例(前述のクラス1)と、主にカバノキ科(シラカンバ、ハンノキなど)花粉症の患者が、豆乳などを摂取した際に発症する「口腔アレルギー症候群」(前述のクラス2)が知られており、近年の花粉症患者の増加に伴って、後者(クラス2)の症例が増加しているという。

発症ケースや発症者の共通点は確認できるも、詳細は不明

これまでの研究から、豆乳による口腔アレルギー症候群は、成人女性が発症するケースが多いこと、ならびに大部分の患者がカバノキ科の花粉症を有していること、豆腐などの大豆加工食品は安全に食べることのできるケースもあること、果物や野菜に対する口腔アレルギー症候群を合併するケースも多いことなどが報告されている。しかし、発症の仕組みや病態などについては、良くわかっていない点も多い。

大豆アレルゲンは加工処理で活性を失いやすい

また、国民生活センターでは、納豆や味噌、醤油といった大豆製品では症状が出ないが、加工の程度が低い豆乳などでアレルギー症状が出てしまう原因について「これまでに大量の大豆製品を摂取してきたことによるものではない」と説明している。

さらに、「カバノキ科の花粉に含まれているアレルゲンタンパク『Pathogenesis-related protein 10(PR-10)』と似たようなアレルゲンが大豆にも含まれていることが影響し、カバノキ科花粉症患者の一部が豆乳等を飲んだ時に交差反応でアレルギーが発症してしまう可能性がある」とのことだ。

ちなみに大豆のPR-10アレルゲンタンパクは「Gly m 4」と呼ばれており、これは加熱や発酵など加工処理で活性を失いやすいという性質があるという。そのため、味噌や納豆に比べて加工の程度が低い豆乳ではアレルギー症状が起こりやすくなる。また、豆乳が液体であることも、豆乳でアレルギー症状が起こりやすいことと関係している可能性があるとしている。

  • 豆乳は加熱や発酵といった加工処理が少ないためにアレルギー症状が起こりやすい

    豆乳は加熱や発酵といった加工処理が少ないためにアレルギー症状が起こりやすい

バラ科の果物にアレルギー症状が出る場合は注意を

また、花粉のPR-10タンパクと似たようなアレルゲンは大豆以外にもリンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、ビワなどの「バラ科の果物」にも含まれているため、豆乳等によるアレルギーの方の半数以上で、これらの果物を食べたときにも唇がはれたり、のどがかゆくなったりするアレルギー症状(口腔アレルギー症候群)が出ることが分かっている。

もしリンゴやモモなどをたべると喉がかゆくなるようなアレルギー症状を持っている人は、今後、豆乳等による口腔アレルギーを発症する可能性があると注意を喚起しているほか、もし摂取してアレルギー様の症状が出た場合は速やかに医療機関を受診することを勧めている。

  • バラの花

    写真はバラの花。リンゴや梅、スモモ、イチゴ、梨、さくらんぼなど、バラ科の果物は多くあるので、注意しましょう

【合わせて読みたい】それもバラ科…!? リンゴに桜に桃に梅、意外と種類豊富なバラ科の植物たち

豆乳アレルギーで知っておきたいポイント5つ

なお、国民生活センターでは豆乳等によるアレルギーに対し、以下のような注意点を掲げている。

  1. 重篤な患者さんの場合は、豆乳のみならず、もやしやエダマメ、豆腐で症状が出ることもあります。納豆や味噌で症状が出ることは極めて稀です

  2. 血液アレルギー検査での大豆特異的IgE抗体価検査は、陰性となることがあります。診断のためには豆乳等の症状を引き起こした大豆製品による皮膚テスト(Prick-to-prick test)で陽性を確認する必要があります

  3. 血液アレルギー検査で、通常全例がシラカンバやハンノキ花粉で陽性の結果になります。これらの検査は豆乳アレルギーの診断に大いに参考になります

  4. 豆乳等によるアレルギーと関係ある花粉はカバノキ科の花粉(シラカンバ、ハンノキなど)です。スギ花粉で大豆アレルギーになることはありません。カバノキ科花粉は春に飛散する花粉で、スギ花粉の飛散時期と重複しています。症状のみからではカバノキ科花粉症かスギ花粉症かは判別できません。判別には医療機関でのアレルギー検査が必要です

  5. 豆乳等をたくさん摂取するとアレルギーになりやすくなるわけではありません。現在、豆乳等の大豆製品を症状なく摂取できている人が、今後も摂取し続けることは通常問題ありません。ただし、カバノキ科花粉症や、果物のアレルギーのある人は、現在豆乳等によるアレルギーがなくても今後、豆乳等によるアレルギーを新しく発症する危険性は他の人よりも高いと考えられています

読者の声:「前までは豆乳が大好きでしたが……」

ツイッターで、この記事を読んだ読者の方からもいくつか意見が届いています。

「『豆乳アレルギーだ』と言うと、まず驚かれるのと不思議がられるので、とても参考になりました。私自身、数年前までは豆乳が大好きでしたが、ある時から異変を感じるようになり。最近はカフェやスイーツ店でも、ヘルシーという理由で豆乳が使われるケースが多いので、もっと多くの人に認知してほしいですし、お店側も明確に表記してほしいと思います」

その他、読者の声はこちらから。(ツイッターに遷移します)

最近はケーキなどでも卵や牛乳不使用をうたっているものが多く出てきていますが、中には代替として豆乳を使っているものもあります。豆乳等によるアレルギーを自覚していらっしゃる方は、口に入れる前に、一度、原料を確認することをお勧めします。