近畿日本鉄道は27日、内部・八王子線について、2015年春頃をめどに「公有民営方式」へ移行することで、三重県四日市市と基本的な合意に至ったと発表した。

軌間762mmの近鉄内部・八王子線。パステルカラーに彩られた260系が活躍する

内部線は近鉄四日市~内部間5.7km、八王子線は日永~西日野間1.3kmの路線で、ともに軌間762mmの特殊狭軌で知られる。全線が四日市市内にあり、電車は両路線とも近鉄四日市駅発着で運行される。しかし経営は厳しく、年間利用者数も1970年度の722万人から、2011年度は363万人とほぼ半減。電車のワンマン化や駅の無人化など経営改善に努めたものの、毎年3億円弱の赤字が続いているという。

近鉄は四日市市へ、「鉄道という形態では赤字を解消する見込みが立たない」とし、内部・八王子線のBRT(バス高速輸送システム)への転換を提案。「あくまで鉄道としての存続を模索したい」とする四日市市との間で、長期間にわたって協議が続けられた。その中で、鉄道として存続させる唯一の方策として浮上したのが「公有民営方式」。土地、施設、車両などを沿線自治体が保有し、鉄道事業者がこれらを無償で借り受けて運行する、「上下分離」による鉄道運営の方式だ。

近鉄と四日市市は、「公有民営方式」への移行を前提に協議を進め、2~3週間程度の交渉期間延長を経て、今回の合意に至った。四日市市は鉄道施設と車両を所有する第三種鉄道事業者に。近鉄と四日市市の出資で設立される新会社が第二種鉄道事業者となり、四日市市から鉄道施設・車両を借り受けて鉄道事業を運営する。これにより、内部・八王子線は2015年春以降も、「公有民営方式」の鉄道として存続することとなった。