9月1日にChromeブラウザは5周年を迎えた。そのアニバーサリーにタイミングを合わせて、米Googleは5日(現地時間)に「Chrome Apps」を発表した。

これまでChrome Appsというとデスクトップ版Chromeブラウザ向けのWebアプリ(以下Chromeアプリ)を指していたが、今回発表されたChrome AppsはWebアプリではない。Webアプリとネイティブソフトウエアのメリットを兼ね備えた新しいタイプのChrome用アプリケーションである。Chrome App-ologistのErik Kay氏は「モダンWebのスピード、セキュリティ、柔軟性と、これまでデバイスにインストールされたソフトウエアでしか利用できなかったパワフルな機能の融合」と説明している。現時点で対応OSはChrome OSとWindows。MacとLinuxでもまもなく利用できるようになるという。

Windows PCで「Google Keep」のChrome Appを起動、Chromeブラウザのタブやボタンはなく、まるでネイティブアプリのような見た目。

Windows PCでは、Chromeからではなく、タスクバーから直接Chrome Appsを起動できる。

Chrome Appsは、Webアプリである従来のChromeアプリ同様に、Googleアカウントでサインインするだけで異なるデスクトップデバイス間で同じように利用でき、自動的に最新版にアップグレードされ、セキュリティ問題の修正も自動的に施される。Google Driveや他のWebサービスとの連携もスムースだ。Chromeをエンジンとしているものの、ユーザーはブラウザを意識せずに使用できる。アプリ画面はほぼアプリのみで、ブラウザのボタンやタブなどは表示されない。Windowsでは、インストールすると自動的にChrome App Launcherに登録され、タスクバーから直接起動できるようになる。インターネットに接続していないオフライン状態でも利用でき、内蔵ストレージ、GPU、USBやBluetoothで接続している周辺機器などにもアクセス可能だ。

5日よりChrome Web Storeを通じたChrome Appsの提供が始まっており、写真加工の「Pixlr Touch Up」、タスク管理の「Wunderlist」、Webコンテンツをスクラップする「Pocket」など、すでに50以上のChrome Appが揃っている。しかしながら、現時点ではWebアプリやモバイル向けの人気アプリがほとんどで、デスクトップ向けで人気の高いソフトの参入を得られるかが今後の課題になる。ネイティブソフトに近い機能・性能を備えたWebベースのアプリを、Chromeが動作する全てのデスクトップデバイス(Windows、Mac、Linux、Chrome OS)で同じように使用できるというのはユーザーにとっても、ソフト開発者にとっても魅力になることは間違いない。

Windows PCまたはChrome OSデバイスでChrome Web Storeにアクセスすると、「For Your Desktop」にChrome Appsがまとめられている。

人気の高い"あとで読む"サービス「Pocket」のChrome App

Webアプリを信奉するユーザーの視点では、Chrome AppsはWebアプリだったChromeアプリをChromeプラットフォームに縛りつけるものになる。この点について、GoogleのKay氏はThe Vergeに次のように述べている。「われわれは、これまでと変わらず今でもWebの力を信じている。だが、Chrome OS向けにネイティブ品質のフルデスクトップ・アプリを書くにはこの方法しかなかった。われわれはChrome OSに大きな期待を寄せており、あらゆる点でデスクトップOSのようにパワフルにしようとしている」。

Chrome Appsは短期的にはChrome OSの使用体験を向上させるものになるが、GoogleはいずれタブレットやスマートフォンにもChrome Appsを広げる計画を持っている。The Vergeに対して、GoogleのBrian Rakowski氏は次のように述べいている。「まずは(Chrome Apps)ユーザーの大多数が存在するデスクトップを最初のターゲットにする。それが最初の通過点になる。だが、将来的な目標はChromeが動作する全てのデバイスで利用できるようにすることだ」。現時点でタブレット/スマートフォン向けはAndroidが成功しているため、Googleが急いでChrome Appsを普及させる必要はないが、Chromeをあらゆるデバイスに浸透させ、Chromeを共通のアプリケーション実行環境とするのが同社の最終目標であるようだ。