「サンデー・ジャポン」(TBS系列)などさまざまな番組で歯に衣着せぬ意見をブチかまし、そうかと思えばキレイなおねえさんにはめっぽう弱い、ご存じ・演出家のテリー伊藤氏。そんな彼が、美少女を泣かせたというニュースが飛び込んできた。しかもお相手が、元・ももいろクローバーの早見あかりだというから大変だ。

といっても、これはタネも仕掛けもあるお話なのでご安心を。日差しが降り注ぐ砂浜で、強い視線を海に向ける早見あかり。その瞳に涙があふれ、頬を伝っていく。その視線の先にいるのはテリー伊藤氏……ではなく、札幌在住の7人組バンド「A.F.R.O」だ。7月3日に発売される4枚目のシングル「青」、そのミュージックビデオ(MV)内で早見あかりを泣かせたのが、テリー伊藤氏というワケなのだ。

2013年7月3日、4枚目のシングル「青」を発売するA.F.R.O

実はテリー伊藤氏、最近はタレント活動が目立ってはいるが、気鋭のテレビプロデューサーとして知られている。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の総合演出を務め、社会現象ともなった「ねるとん紅鯨団」ではゼネラルディレクターとして番組を取り仕切った。まさに日本のエンターテイメント界を引っ張ってきた大物が新人アーティストのMVを作るとは、一体どういうことなのか? テリー伊藤氏に直撃した。

「作ろう、作りたいと思ったのは、何より歌の魅力です。サビの部分を何度か聞いて、胸を打たれて……すぐにストーリーが頭に浮かんできたんです。そのときにはもう『作ろう』と心に決めていましたね」(テリー伊藤氏)

自分の青春時代がよみがえってくるような、世代を超えるものを感じたことが、映像制作への意欲に繋がったと言うテリー伊藤氏。MV制作を快諾したときの様子を、トイズファクトリーの大谷直司さんはこう語る。

「A.F.R.Oのメンバーが、曲を聴いて欲しい、MVをお願いしたいと頼み込んだんです。インディーズ時代からずっと大切に歌ってきた曲だから、と。その真摯な姿勢に、テリー伊藤さんも胸を打たれた様子でした。新人アーティストだからどう、といった垣根なしに『作りたい』とピュアに考えていらっしゃるのは、傍から見ている僕たちにも伝わってきましたよ」(大谷さん)

A.F.R.Oのメンバーの熱意、そして楽曲への気持ちが通じた結果生まれたMVは、早見あかりが友達の制止を振り切って学校を飛び出すシーンから始まる。やりきれない思いを爆発させつつ歩くその姿を、ずっと見守っていたA.F.R.Oのメンバーがあの手この手で笑わせようとするが、まるで無駄。やがて海に着き、大泣きした彼女の前で、A.F.R.Oが『青』を演奏し、歌い上げる。たったひとりの心に届けるための、応援ソングだ。

撮影中の一コマ。真剣に打ち合わせを行うテリー伊藤氏とA.F.R.Oのメンバー

「作中では、彼女の怒りや悩みの原因には敢えて触れていません。それは、見た人に自分を重ねて欲しいから。進路のこと、クラスのこと、人間関係、そして失恋……生きていく限り、うまくいくことばかりではありません。自分っていったい何なんだろう、どうしてわかってもらえないんだろうといった悩みは、どうしても生まれる。見る人が自分をあてはめながら、『青』を聴いて欲しい」(テリー伊藤氏)

撮影は早朝から行われたそうだが、春にしては珍しく湘南の海が荒れていた。「彼女の荒れた心を表しているような、いい映像が撮れたと思います」(テリー伊藤氏)

早見あかりについて「彼女は今、ももクロからの旅立ちのとき。あの涙は、自分なりに思うところがあったんじゃないかな」と、楽曲を通じてリアルに応援の意を表したテリー伊藤氏。「A.F.R.Oのみんなも、それを見て今後に生かしていけるものが得られたと思う」と、今後の躍進に期待しているようだ。

春の寒さにも堪え、早朝から撮影が行われた

A.F.R.Oが活動を開始したのは2004年。札幌で精力的にライブ活動を行い、2012年にメジャーデビューを果たした。インディーズ時代から関ジャニ∞に楽曲提供をしたり、CMで曲が使われたりと頭角を現していたが、メジャーデビュー後も北海道日本ハムファイターズの陽岱鋼外野手とMV内で共演するなど、話題には事欠かない。さらに、この「青」はインディーズ時代から大切に歌い継がれてきた曲。ファンの注目度も高い。

ボーカルのNORIYAが、MV依頼時に口にした言葉がある。「僕らもよく壁にブチ当たることがあるんです。悔し泣きもいっぱいします。でもこの涙はぜったいムダじゃない、絶対乗り越える力になるし、乗り越えて初めて心の底から笑えるようになると思うんです」(NORIYA)

人生には、思い通りにならないことも多い。うまくいっているからこそ、不安なときもある。そんなとき、「青」を思い出してみてはいかがだろうか。