全米第5位の携帯キャリアであるU.S. Cellularが、間もなくiPhoneの取り扱いを開始する計画だという。具体的な料金プランや開始時期については明言していないものの、これで米国上位6キャリアすべてがiPhoneの取り扱いを開始することになる。U.S. Cellularでは近年契約者数の減少傾向に悩まされており、その主な理由を「製品ラインにおけるiPhoneの欠如」に見出している。

これは5月3日に行われた同社決算報告において発表したもので、Wall Street Journalなど複数のメディアが報じている。U.S. Cellularという名前にあまり馴染みのない方も多いと思うが、CDMAのネットワークをベースに米国の都市部を中心にした一部エリアをカバーし、比較的低価格の利用料で人気を集めている。こうした半地域系キャリアやプリペイドを中心とした低価格キャリアは米国に数多あるが、その中でもトップランクに位置する。以前までは同5位のMetroPCSに次ぐ第6位のキャリアだったが、T-Mobile USAとMetroPCSの合併を受け、第5位へと浮上している。現在500万以上の契約ユーザーを抱えている。

WSJによれば、現在U.S. Cellularはポストペイド契約ユーザーの流出に悩まされており、その主要な原因がiPhoneによるものだと分析しているという。そのため、iPhone販売開始による製品ラインナップ拡充が急務だとの判断だ。米国では上位3社のVerizon Wireless、AT&T、Sprint NextelはすでにiPhoneを取り扱っており、T-Mobileもまた今年4月から販売をスタートした。U.S. Cellularの次につけている第6位のCricket Wireless (Leap Wireless)でも昨夏からiPhoneの取り扱いを開始しており、上位キャリアでU.S. Cellularのみが唯一iPhoneを販売しない会社となっている。

一方でiPhoneの販売は同社にとって新たな負担となる可能性もある。WSJによれば、U.S. Cellularは向こう3年間で12億ドル規模のiPhone販売契約を結び、今年後半にも販売をスタートする計画だという。他社のケースでいえば、Sprintは3年契約で155億ドル、Leapも同様に9億ドルの販売契約を結んでいる。だが以前にWSJがレポートしたように、Leap Wirelessでは売れていないiPhoneの在庫が1億ドル規模で積み上がっている状態で、このままでは当初のAppleとのコミッション達成は難しく、膨大な負債を抱える可能性が指摘されている。原因の1つは他のスマートフォンと比べても2~3倍近い本体価格と、高額な料金プランが敬遠されたとみられる。こうした問題を受け、Leapは今年4月にiPhone向け料金プランを大幅改定し、販売状況改善に努めている。だが同社が当初のコミッション達成が難しい場合、今夏までに前述の1億ドル分のiPhoneを買い上げなければならないほか、新たなiPhone仕入れが行えない。これは新製品投入が行えないことを意味するため、次期モデルの登場する秋以降に大きな問題となってくるとみられる。

U.S. Cellularの判断は順当なものだといえるが、Leap Wirelessの苦難を見る限り、同様の事態に陥る危険性も十分にはらんでいる。大々的なセールスが難しい中規模以下のキャリアにおいて、今後悩ましい問題となるだろう。また日本のように大手キャリアでiPhone販売を行っていない市場でも、キャリアにとっての大きな悩みの種となる。