Extreme Techに、イタリアのトレント大学の研究者Nicola Pugno氏が開発した新しい素材に関する記事が「World’s toughest material created by tying slip knots into weak, commercial thread」として掲載された。Nicola Pugno氏は自らの発見を「コロンブスの卵」的であると呼んでおり、簡単な方法できわめて高い効果が得られる方法だと紹介している。

同記事ではまず引張強度とじん性について紹介。物が「丈夫である」と評価される場合、いくつかの側面から「何が丈夫なのか」を評価する必要がある。引張強度とは荷重ないしは引張に対する強さ、じん性は粘り強さを表しており衝撃に対してどこまで強いかを表している。たとえばガラスは引張強度は高いがじん性は低い。硬いが、強い衝撃が加わるといきなり割れるという特性だ。ゴムなどは引張強度は低く引っ張るとすぐに切れるが、じん性は高く衝撃に強い。

じん性は壊れる直前の重量あたりのジュール、または面積あたりのジュールなどで表現される。「World’s toughest material created by tying slip knots into weak, commercial thread」ではNicola Pugno氏の研究の結果、繊維質のじん性を高める方法が発見されたとして、その方法を紹介している。

高分子繊維として販売されているEndmaxのじん性は44j/gほどと説明があるが、この繊維を引き結び(slip knots)で編み込んだところ、じん性が1,070j/gまで引き上がったという。引き結びは引っ張れば引っ張るほど締まっていく輪を作るような結い方のひとつで、簡単な結い方で実用的であることらか、さまざまなシーンで使われている。

Nicola Pugno氏はさまざまな引き結びを試してみたが、もっとも基本的な引き結びの方法が効果的だったと説明。繊維に加えられるエネルギーの大半が繊維の摩擦へ変換されることで、一本の繊維だったときよりも大きなエネルギーに耐えることができるようになったという。

現在、理論上ではカーボンナノチューブやグラフェンが1,000j/gほどだとされているが、グラフェンをさらに引き結びで編みこむことができれば、原理的には100,000j/gといったじん性の繊維を実現できるという。これは防弾チョッキなどに使われている繊維の1,250倍のじん性に相当する。