パナソニック デバイス社は2月21日、両目の機能を持ったイメージセンサを開発し、1つのレンズシステムと1つのイメージセンサで構成された通常のカメラシステムそのままでステレオ視による3D撮像を可能とする技術を開発したことを発表した。

同成果の詳細は2月20日(米国時間)に米国サンフランシスコで開催された「ISSCC 2013(International Solid-State Circuits Conference)」にて発表された。

従来のイメージセンサを用いた3Dカメラの構成例としては、レンズとイメージセンサを2つずつ備えた二眼カメラや一組のレンズとイメージセンサの間に左右光線を交互に遮断する光学素子を備えた単眼カメラなどがあるが、二眼カメラは部品点数が多く、かつ小型化が困難という課題があるほか、光線遮断素子を備えた単眼カメラの場合は、左目/右目画像の同時取得が不可能で手振れに弱いという課題があった。

今回開発された技術は、左右方向から入射する光線を左右それぞれの電気信号に変換する左目/右目画素を列交互に配置することで、1つのイメージセンサで左目/右目画像を同時に得ることを可能としたもの。

具体的には4つの技術を開発することで実現したという。1つ目は、「独自のデジタルマイクロレンズ技術と、レンチキュラーレンズを組み合わせたデュアルオンチップレンズ構造形成技術」で、半導体の微細加工技術を用いて、可視光波長(400~700nm)より短い間隔(約100nm)にデジタル化されたパターンを屈折率が異なる2種類の無機材料で形成することで、光を必要な場所に集めることを可能とした。

2つ目は、「デジタルマイクロレンズの粗密構造を光の波長以下の精度で加工し、かつ粗密構造の空隙を無機材料で充填する微細の半導体プロセス技術」で、高屈折率材料の窒化シリコン薄膜に粗密の間隔をナノメートルの精度で刻み、この窒化シリコンの空隙を低屈折率材料の酸化シリコンで充填してデジタルマイクロレンズを形成するというものとなっている。

3つ目は、「左右方向からの入射光線のみをそれぞれ左目/右目画素のフォトダイオードに集光するデュアルオンチップレンズの構造設計技術」で、左目画素と右目画素を一組とし、それが並んだ列の上方に1つのレンチキュラーレンズを配置したほか、個々の左目/右目画素に、デジタルマイクロレンズを配置。これら2種類のレンズで構成したデュアルオンチップレンズ構造によりカメラレンズの左右から入射する光線をそれぞれ左目/右目画素のフォトダイオードのみへ集光し、高感度かつ低クロストークを実現したという。

そして4つ目は「デジタルマイクロレンズを画素ごとの入射角度に最適設計し、左目/右目画素の感度差を無くす最適化設計技術」で、デジタルマイクロレンズの粗密パターンを、各画素ごとに計算し、レンチキュラーレンズで分離した光線がフォトダイオードへ最大限に集光するように設計することで、左目/右目画素の感度差を抑制することに成功したというもの。

これらの技術を活用することで、従来イメージセンサ比で2倍となるピーク感度を実現し、同一タイミングで撮像した左目/右目画像を出力することを可能にしたほか、左目/右目画素がそれぞれピーク感度を示す入射光線角度を任意に設計できるようになったことから、画面全体での均一な感度を実現することができるようになったという。

また、所望角度以外の入射光線に対する感度を抑制することでクロストークを6%に抑えることに成功しており、ゴーストを防止することが可能になったほか、左目/右目画素の感度差5%未満を実現したことによる、低フリッカ性能を実現したとする。

なお同社では、同イメージセンサは3D撮像カメラの小型化・軽量化、部品点数の低減を可能とするため、医療、産業、モバイル分野などへ3D技術の適用を拡大することが可能になるほか、左目/右目画像のずれを利用することで位置検知、モーションセンサとしても応用可能だと説明している。

パナソニックが開発した両目の機能を持った単眼3Dカメラ向けイメージセンサ