2004年6月の発見当時「2029年の最接近時に地球と衝突する確率は2.7%」といわれ話題となった小惑星「アポフィス」が9日、地球から1,450万キロメートルの地点を通り過ぎた。これを観測した欧州宇宙機関(ESA)と米航空宇宙局(NASA)によれば、2029年の衝突はなくなったが、再びアポフィスが戻って来る2036年の地球との衝突の可能性については両機関の間で見解が分かれている。

欧州宇宙機関は同日、地球から150万キロメートル離れた宇宙空間に置いた「ハーシェル宇宙望遠鏡」による観測結果を発表した。それによると、アポフィスの直径は、これまで考えられていた270メートル(誤差±60メートル)よりも大きく、325メートル(同±15メートル)だった。「直径が20%大きいと、体積あるいは質量は75%増えることになる」とドイツのマックス・プランク宇宙物理学研究所のトーマス・ミューラー(Thomas Müller)氏。さらに、アポフィスの反射率も従来の0.33から0.23に修正された。これは浴びた太陽光の23%を小惑星が反射するもので、残りは吸収されて小惑星を加熱する。

これにより懸念されるのは、加熱・冷却の繰り返しによってアポフィスの軌道が変化してくること(ヤルコフスキー効果)だ。2029年の地球衝突は免れたが、その時(4月13日)は地球から3万5,786キロメートル上空の静止軌道(静止衛星が投入されている軌道)よりも近い距離をアポフィスは通過する。2029年の地球接近でアポフィスの軌道が大きく変わる可能性があり、次の2036年にどれだけ地球に接近するか不明だという。

一方、NASAは翌日(10日)すかざす、アポフィスの2036年の地球衝突を否定する発表を行った。ジェット推進研究所(JPL)のダン・イェーマンズ(Don Yeomans)氏は、NASAが運用するマグダレナ・リッジ観測施設やゴールド・太陽システム・レーダーなどによる最新の観測データであることを強調した上で、「アポフィスによる2036年の地球衝突の確率は100万分の1よりも小さい。これは、衝突はないと言い切れるものだ」と述べた。

2029年の接近についても、地球から3万1,300キロメートルの距離を通過し、そのサイズの小惑星としては記録的なものだが、「来月(2月)15日に地球に大接近する小惑星『2012 DA14』は直径が40メートル、地球の2万7,520キロメートル上空を通過する」という。しかし、だからといって漫然とはしていない。アポフィスをはじめその他の小惑星についても観測を強化し、継続していくという。