火山あるいは海底火山は、地球内部のマントル深部からマグマが上昇して、噴出してできたものだ。こうしたマグマの上昇箇所は「ホットスポット」と呼ばれ、その位置は動かないというのが、これまで地球科学での定説だった。海底火山や火山島が連なる海山列も、マントル上層部のプレート(岩板)の運動に従ってマグマの噴出口が移動し、形成されたものと考えられていたが、近年になって、ホットスポットはプレート運動とは無関係に移動していることが分かってきた。さらに今回、東京大学大気海洋研究所の山崎俊嗣教授や愛知教育大学の星博幸准教授、米オレゴン州立大学のアンソニー・コパーズ准教授などの研究チームは、同じプレート内にあるホットスポットでも個別の移動をしていることを、海山列の掘削調査によって明らかにした。

マントル深部に起源をもつホットスポットとしては、地球上に10個ほど存在しているという。日本列島の東方、北太平洋のカムチャツカ半島の根元からハワイ諸島に連なる「ハワイ-天皇海山列」もこれまで、その成因となる「ハワイ・ホットスポット」は動かないまま、北西方向に移動する太平洋プレートによって次々に形成されたものと考えられていた。ところが約10年前に、米国の研究チームが天皇海山列の掘削調査を行い、ホットスポットが約8000万年前から5000 万年前の間に、南 へ約1700キロメートル移動した可能性のあることを報告した。

山崎教授らの研究チームは「統合国際深海掘削計画」(Integrated Ocean Drilling Program, IODP)の第330次航海(2010 年12月-2011年2月)に参加し、南太平洋のニュージーラ ンド沖の「ルイビル海山列」にある5つの海山を掘削調査した。同海山列もハワイ-天皇海山列と同じ太平洋プレート内にある。得られた溶岩試料の強磁性鉱物に記録された「古地磁気」を高感度磁力計で読み取り解析した結果、同海山列の成因となっている「ルイビル・ホットスポット」の南北の移動は小さく、約 7000 万年前でもほぼ現在の緯度付近にあったことが明らかとなった。このことは、ルイビル・ホットスポットが、ハワイ・ホットスポットと揃って移動したのではなく、個別に移動することを示している。

ホットスポットの移動については、マントル深部の流れ(北太平洋下では北から南への流動)によってマグマの上昇流(プルーム)が“たなびく”という「マントル・ウインド・モデル」で説明される。今回の結果は、南太平洋のルイビル・ホットスポット付近でのマントル流動の南北成分は小さいというモデル予測にも一致するという。

今後は、より高精度のモデルづくりのために、大西洋やインド洋に存在するホットスポットの運動の研究調査も検討されている。火山噴火や地震などの地球変動の基本ともなる従来のプレート理論が、見直される可能性が出てきたという。

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