京都大学(京大)は、小脳で処理された情報の出口である小脳核(中位核と歯状核)が、運動機能と認知機能に関わる小脳からの信号をそれぞれ部位特異的に仕分けを行い、大脳や脊髄に出力していることを明らかにしたと発表した。

同成果は同大霊長類研究所の高田昌彦 教授と同 宮地重弘 准教授らと、米国ミネソタ大学脳科学センターの陸 焼峰 准教授らによるもので、詳細は「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

これまで小脳は運動の実行機能を担っていると考えられていたが、近年の研究により認知機能、特に行動の認知的側面に関わっていることが示唆されるようになってきた。実際、小脳で処理された情報の出口の1つである小脳核の中位核は連合運動学習などの認知機能に関与していることが知られるようになってきたが、実際にそれを実証する解剖学的知見は得られていなかった。

今回、研究グループは、シナプスを越えて神経回路を構成するニューロンをラベルすることができる狂犬病ウイルスを用いて、それぞれ運動機能と認知機能の高次中枢である、大脳皮質の一次運動野や前頭前野(特に46野)に多シナプス性に入力する小脳核ニューロンの分布の解析を行った。

その結果、運動情報は後中位核と歯状核の背側部や前中位核から視床を介して一次運動野に入力するのに対し、認知情報は後中位核と歯状核の腹側部から異なる視床の領域を介して前頭前野に入力することを発見した。

研究グループではこの発見は、後中位核が歯状核と同様に運動機能と認知機能に関わる2つの出力チャネルを持っているのに対し、前中位核は運動チャネルのみを持っていることを示すものであり、小脳失調の際に発現する運動障害や認知障害の治療ターゲットを特定するのに寄与できると考えられるとコメントしている。

小脳核から一次運動野および前頭前野への多シナプス性入力様式。小脳で処理された運動情報が小脳核のうち後中位核と歯状核の背側部や前中位核から視床を介して一次運動野に入力するのに対して、認知情報は後中位核と歯状核の腹側部から前頭前野に入力する