間もなくの登場が噂される次期iPhoneについては新機能においてさまざまな憶測がなされているが、その1つに高速ネットワーク「LTE (Long Term Evolution)」への対応が挙げられる。米Wall Street Journalの9月7日(現地時間)の報道によれば、この次期iPhoneのLTEは米国だけでなく、欧州やアジアまで世界中の地域での対応が行われるとのことだ。
同件に詳しい情報源からの話としてWSJが報じたところによれば、世界各国での利用を想定しているものの、必ずしも現地のすべてのキャリアに対応するものではないという。現在のiPhoneは基本的に1つの製品モデルですべての国のキャリアに対応するグローバル路線を採っており、LTEでもまたこの方針を採ることになるとみられる。一方で各国のキャリアで要求される周波数帯は異なっており、これがグローバル対応を難しくしている。IDCアナリストのJohn Byrne氏によれば、現行の3Gにおける周波数帯のコンビネーションが世界でおよそ22通りなのに対し、LTEではそれが36通りまで拡大するという。これらをすべて同時にカバーするのは難しく、結果として未対応の地域が出現したり、対応地域でもキャリアによっては未対応といった状況に陥る。
日本では現在NTTドコモのみがFDDベースのLTEサービスを展開しているが、この次期iPhoneの登場する秋頃に合わせて日本でのiPhone取り扱いキャリアであるソフトバンクやKDDI (au)もLTEサービスのローンチを計画しており、新型iPhone登場とともに一気にLTEが本格展開される形になるだろう。とはいえ周波数帯の問題は日本でも例外ではなく、対応周波数が制限されたり、あるいは未対応キャリアが出現する可能性もある。
なお、すでにLTE対応が行われている第3世代iPad (The new iPad)については、米国とカナダ以外の国ではLTEが利用できず、あくまでHSPA+の運用に留まっている。これは前述の周波数帯のサポート問題によるところが大きい。ところがAppleは世界での新型iPadのマーケティング展開において「4G」のキーワードを使ってしまったため、LTE対応と誤認するとの訴えをオーストラリアで起こされて裁判に負けたほか、英国ではAdvertising Standards Authority (ASA)から広告にクレームがつくなど、修正を余儀なくされている。最終的に新型iPadでの4G (LTE)の表記を改め、「Wi-Fi + Cellular」というモデル名を採用することになった。AppleがもしiPhoneでのLTEグローバル対応を実現した場合、新型iPadでの問題をある程度クリアしたとみられる。また未対応キャリアや地域が出現することに合わせ、どのようにマーケティングメッセージを打ち出していくかが注目だろう。