Apple対Samsungの特許訴訟に関する審理がスタートしたが、多くのAppleファンはむしろその過程で登場した数々の資料に興味を惹かれているかもしれない。先日はiPhone登場よりもはるか以前に「厚くて大きい"プロトタイプ版iPad」が存在したことを紹介したが、今回は最初期のiPhoneのプロトタイプのデザインが登場し、世間を賑わせている。
この件はThe VergeやAll Things Digitalなどが報じている。The Vergeの記事には初期のものとみられるiPadのプロトタイプのほか、現在のiPhoneに形状が近いが非常に細長い"N90"と呼ばれるモデル、角が削れた八角形デザインのiPhone、さらには角があって四角い形状のどちらかといえばソニーXperiaに近いデザインのiPhoneなど、さまざまな資料があって興味深い。All Things DigitalではさらにCADデータやラフスケッチを中心としたデザイン資料を100点にわたって紹介している。
もう1つ面白いのは、The Vergeが紹介している「JONY」と呼ばれるiPhoneプロトタイプの写真だ。形状はやや野暮ったいiPhone 4/4Sといった感じで、巨大なカメラ孔、本体横にダイヤル式入力装置が確認できるほか、本体に大きく「JONY」とロゴが記されている。実はこの写真、今回の両社の訴訟のキーとなる証拠の1つとしてSamsung側から提出されたもので、「SamsungがApple製品を真似たわけではなく、デザインそのものは携帯として普遍的なもの」であることを示すものだという。
実はこの「JONY」、2006年当時に工業デザイナーとしてAppleに在籍していた西堀晋氏がJonathan Ive氏からの指示で「もしAppleがソニーだったとしたら、どんなデザインの製品を作る?」をコンセプトに描き起こしたデザインだという。側面にジョグダイアルがついていたり、ロゴが「JONY」になっているのは、そのあたりのジョークを交えたものだろう。現在はAppleを退職している西堀氏だが、当時のAppleのコンセプトデザインの多くに携わったとみられており、その証言を得るためにSamsungや裁判所から出廷を依頼されている。同氏がそれを断っているというのが裁判の最新状況だ。