名古屋大学(名大)は7月23日、脂肪組織から分離した「再生細胞(Adipose derived regenerative cells:ADRC)」を移植すると、リンパ管の再生を誘導しリンパ浮腫を改善させることを証明し、リンパ浮腫組織に移植された再生細胞が産生する成長因子により、リンパ管の再生が促進されていることを明らかにしたと発表した。

成果は、名大大学院 医学系研究科 循環器内科学の室原豊明教授及び清水優樹大学院生らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、7月14日付けで米国心臓協会誌「Journal of the American Heart Association」電子版に掲載された。

日本の死亡原因1位であるがんに対する積極的治療は医学の進歩と共に拡大してきている。それらにより生命予後の改善はされたが、反面、外科的治療(リンパ節郭清)や放射線治療後にしばしば合併する2次性の「リンパ浮腫」は疼痛や感染などを繰り返し、また、その容姿などからも患者さんの生活の質(QOL)を大きく低下させる難治性疾患であり、その対策は重要課題だ。

現在ガイドラインで推奨されている治療法としては、弾性ストッキング着用やリンパマッサージなどの理学療法が中心であるため効果も限定的であり、未だに十分な治療法がない。新たな根本治療として、リンパ管の再生を促し、損傷されたリンパ管ネットワークを再構築するという試みの治療法の開発が現在期待されている状況だ。

研究チームは、マウス尾部の既存リンパ管を一部切除分断することにより血行障害の影響を受けない尾部リンパ浮腫モデルを作製。この疾患モデルを用いてADRC移植によるリンパ管再生促進効果及びリンパ浮腫軽減効果を検討した。

そして、マウス皮下脂肪組織を採取後コラゲナーゼ処理により分離したADRCを培養などの操作を経ずにそのまま使用し、リンパ管損傷部位近傍に約2百万個の細胞を注入法で移植。

細胞移植群では、対照群に比べて新生毛細リンパ管密度が有意に増加し、それに伴いリンパ浮腫が改善した。また細胞移植群では、リンパ浮腫の合併症である象皮病様の所見である皮膚の増生や繊維化などの所見も軽減したのである。

ADRCは、「Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)-C」などのリンパ管新生促進因子を産生して、「リンパ管内皮細胞」の増殖や遊走を増強させることにより、近傍の既存リンパ管からの発芽的再生を促進した形だ。また、VEGF-Cは骨髄に存在する「リンパ管内皮前駆細胞」を局所へ動員し、リンパ管の再生を促進させている可能性も示唆された。

ADRC細胞のヒトへの臨床応用には、ADRC移植の効率性、さらなる安全性の検討を要する。そのため、研究チームは中型動物(ウサギなど)を用いた前臨床試験を予定しているとした。

画像1。対象マウス(左)とADRC移植マウスの尾

画像2。対照群、ADRC移植群、正常マウスの尾部直径の経時的変化を比較したグラフ